巨大コウモリをSNS上で拡散する前に知っておくべきこと

2020.07.11
auther vaience
巨大コウモリをSNS上で拡散する前に知っておくべきこと

コウモリは世界中至る所にいますが、オオコウモリが見られる地域は地球上の一部に限られます。そのためフィリピンで撮られた巨大フルーツコウモリの写真がこのところソーシャルメディアを賑わわせているとしても驚くにはあたりません。「AlexJoestar622」氏は6月にこうツイートしています。「フィリピンには人ほどもあるコウモリがいるって話を覚えてるかな?これがそのコウモリだよ。」

メディアで拡散されるネタにはよくある事ですが、ツイートされた写真は数年前ウェブサイト「レディット(Reddit)」に載ったもので、フィリピン人の「sakundes」氏が自宅の裏で素晴らしい動物に遭遇したという話が元になっています。

sakundes/Reddit

撮影された画像の遠近感から、コウモリは実物より大きく見えています。オオコウモリが人間の大きさにまでなることはありません。最大種は翼長1.7mに達するものの身体は小さく、その全長はせいぜい30cm位です。ただしコウモリが本物であることは確かです。

レディットには別の角度から撮った写真も投稿されており、そこにはコウモリが昼の眠りから覚めてあくびをする姿が写っています。オオコウモリは通常夜間と薄明時にしか活動しないのです。

sakundes/Reddit

インターネット上の解説にはフィリピンオオコウモリ(学名Acerodon jubatus)としているものもありますが、頭部に特徴的な黄色の毛がないことからこれは信憑性に欠けます。

もっともフィリピンオオコウモリはアフリカ、インド、アジア、オセアニアにかけて見られるオオコウモリの一種で、世界最大種の1つではあります。この眠った生き物は実際にはジャワオオコウモリ(Pteropus vampyrus)である可能性があります。これは長くとがった耳と狐のような顔や頭を特徴とし、人目を惹くオオコウモリの一種です。

フィリピンでは生息地を失ったり食料として捕獲されたため、ほぼ全てのオオコウモリが絶滅危惧種となっています。

Enwebb/Wikimedia Commons/CC BY-SA 4.0

さまざまな文化団体がコウモリを吸血鬼と結びつけるのですが、オオコウモリは血に飢えた夜の獣などではありません。基本的に果実食であり、薄明時には騒がしく集まってイチジクなどの果物を食べるものの、日中は大きな木の上のねぐらで休んでいます。

飲むとすれば血というよりは神様の酒でしょう。実際、世界中1,300種のコウモリのうち血を吸うのは3種類に限られます。生物学的にはこれはかなり奇妙な習性だと言えます。

また親類のココウモリとは違ってオオコウモリは反響定位によるナビゲーションを行なわず、視覚と嗅覚に頼って飛行しているのです。 コウモリは愛らしかろうが産毛に覆われていようが、動物由来感染症のリスクを持っています。その一方では害虫抑制、植物受粉、種子拡散その他多くの役割を持ち、世界の生態系にとって大変重要な存在でもあります。それに多くのコウモリは結構可愛いものです。

reference:sciencealert

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