4万6千年の歴史を持つアボリジニの聖地を鉱業会社が破砕

西オーストラリア州で4万6千年の歴史を持つアボリジニの遺跡が鉄鉱石採掘のため跡形もなく消えてしまいました。ジューカン渓谷第1・第2岩陰洞窟は文化的、歴史的に重要な遺跡でしたが、鉱業会社リオ・ティントの5月26日付け広報をABCニュースが報じたところによると、先週末の爆破によって2つの遺跡が破壊されてしまったとのことです。

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これらの岩陰遺跡は西ハマースリー高原にあるトム・プライス山から北西へ約60km離れた位置にあります。地元ラジオ局のガールダ・メディア(Ngaarda Media)によると洞窟は4万6千年以上前からアボリジニによって使用されており、この高原における最古の洞窟住居遺跡であることが考古学研究によって明らかになっています。

2014年の発掘調査では工具や祭祀用具など2万8千年前に遡る重要工芸品が発見されました。中でも驚異的なのは洞窟内で4千年前の人の束ねた髪が見つかったことです。遺伝子分析により、何千年も前ここに住んでいた人たちは代々この土地を所有するプートゥクンティクラマ・ピニクラ族(PKKP)の直系の先祖であることが分かりました。

PKKP文化遺産の重要性を考えると、洞窟の破砕は想像を絶する衝撃だと言えます。PKKPアボリジニ協会長でクラマ土地委員会のメンバーでもあるバーチェル・ヘイズ氏はガールダ・ラジオ局に次のように語っています。「ひどい話です。遺跡が破壊され、その年代とプートゥクンティクラマ族・ピニクラ族に直接つながる関係を聞かされた時には本当に感情的になりました。私たちの先祖がこの地に住んだ、まさにその場所なのですから。それがもうそこにないというのは本当につらいです。」

取り壊しは1972年のアボリジニ文化遺産法に基づき、2013年にアボリジニ担当大臣が許可したものですが、この法の下では鉱業の権利が優先されています。48年前の法律であり、時代遅れかつアボリジニの権利に対する配慮を欠くものとして以前から批判されていました。

この法律によると、アボリジニの遺跡を破壊損傷するような活動についてはまずアボリジニ文化資料委員会に申請することとされています。しかしアボリジニに属する人物を委員会に加える法令上の定めはなく、委員会決定に対して反対意見を表明する権利もありません。

破壊の元凶となった多国籍鉱業会社リト・ティントは自社の活動を正当化し、AFPが報じた声明の中でこう述べています。「2013年、ブロックマン第4鉱山における当社の活動でジューカン第1・第2洞窟に影響が及ぶ点に対する大臣認可を頂きました。当社としては歴史資料の範囲に関してPKKPの皆様と合意のもと建設的に作業を進め、現実的な部分は作業内容を変更して歴史資料への影響を回避し、重要文化地域の保護に努めてきたのです。」

将来起こりうる類似の事態を防ぐため、1972年のアボリジニ文化遺産法は現在見直しが進められています。

reference:iflscience



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