1996年、NASAが火星から飛来した隕石に微小な生命の証拠が含まれている可能性があると報告し、世界中を賑わせた。しかし、現在も結論は出ておらず、火星に生命は存在したのか、しているのか、この広大な宇宙において人類は未だに地球外生命体を発見することはできていない。とはいえ、人類は長い年月をかけて、生命がいる可能性が高いであろう星々の特定には成功している。例にあげると、火星や、木星の衛星エウロパ、土星の衛星エンケラドスやタイタンなどにはかなりの生命存在の証拠が集まってきている。さらに、例にあげた星は全て太陽系内の星であり、人類が到達可能な範囲に位置している。
火星は地球型惑星に分類される、硬い岩石の地表を持つ星で地球の半分ほどの大きさ。地球の100分の1程の大気(地球でいうと飛行機が飛んでいる高度よりも上空の大気)を持ち、地表の平均気温はマイナス43度となる。赤道付近における最高気温はマイナス20度にも達するため、案外住むことができそうな気温に感じるだろう(北海道の旭川市ではマイナス41度が記録されたことがある)。
そして、地球と火星では大きく違う点がある。それは火星には磁場が存在しないということである。地球には、太陽よりやってくる強い放射線から守ってくれる磁場が存在するが、火星にはそれがほとんどないため、放射線が容赦なく地表に降り注ぐ。そのため、常識的に考えると火星の環境では生命が生息するには絶望的とも言えるのかもしれない。しかし、そんな火星の強力な放射線環境でも生存可能な生命が実は地球に存在している!それは後ほど紹介することにしよう。
2015年にNASAが火星大気中の水と重水の比率や45億年前の火星由来の隕石などから、43億年前の火星には広大な海が広がっていたという推定を発表し、その研究結果は米科学雑誌「Science」に掲載された。
NASAによると、43億年前の火星に存在していた水量は少なくとも2000万立法キロで、火星表面の19%を液体の水が占めていたという。場所によっては水深1万6000メートルにも達していたそうだ。そこで重要な太古の火星には生命がいたのか、とても気になるところだろう。
宇宙生物学の世界では生命が誕生するために次の3つの条件が満たされている必要があるとされている。
1.生命活動を維持させるエネルギー源の存在
2.有機物を反応させる場となる液体の存在
3.有機物の存在
43億年前の火星には、上記のとおり『2』は存在していた可能性が高い。そして、『1』も太陽光などにより条件は満たしていた。それでは『3』の条件は満たしていたのだろうか。
結論から言うと、答えは”Yes”だ。
2018年6月8日にNASAが緊急会見を開催し、火星探査機キュリオシティが「ゲール・クレーター」で有機分子を発見したと発表したのだ。そして、興味深い点が有機分子が発見された場所である。何故かというと、30億年前のゲール・クレーターは大量の水で満たされていたからである。つまりは、この発見された有機分子は太古の火星の湖に生息していた生物の痕跡であるかもしれないからである。
話がそれたがこのように、太古の火星には生命が誕生する条件がすべて満たされており、生命が存在していた可能性が非常に高いのである。太古の火星の生命が現在の過酷な環境に適応するために進化を遂げて、今なお生き残っているというのも絵空事ではないだろう。
地球上にも生物が生存することが不可能ではないかと思われるような過酷な環境が数々と存在するが、意外なことにそのような環境でも生命が見つかっている。
地球の深海に数百度もの熱水が噴き出す熱水噴出孔という場所がある。数百度という高温環境かつ深海なんかには生き物なんかいないのではと思うのが普通だが、ここにも生き物は存在する。チューブワームと呼ばれる目も口も消化器官もない生物や、人間にとっては毒となる硫化水素を餌とするバクテリア、さらにそのバクテリアを餌とするエビも生息しているのだ。
さらには、地球最強の生物であるクマムシは知っている方もおおいのではないだろうか。クマムシが地球最強と言われる所以はその生命力である。クマムシは150度という高温や、マイナス200度という低温にさらされても生き延びる。また、人間の致死量の1000倍以上のX線を照射されても、6000気圧もの高圧をかけられても生き延びることができるのだ。2007年に欧州宇宙機関の宇宙実験衛星によりクマムシが宇宙デビューを果たした。クマムシは10日間の間、極度の温度変化を伴う真空状態に置かれることとなった。しかし、クマムシは当たり前のように宇宙空間を生き延びたのであった。
悪魔でも、普段から最強なわけではなくて「乾眠」と呼ばれる能力によるものだが、このように地球上には様々な極限環境を生き延びる生物が存在しているのである。いくら過酷な環境とはいえ、火星に生命体が0というのはどうにも納得できない話であろう。
火星大気中には地球と同じく、一定の割合のメタンが含まれている。そして、このメタンという物質は火星での生命体探索において、重要なカギを握っているのである。
メタンガスは比較的速やかに消散するため、何らかの継続的にメタンを生成する構造がない限り、大気中に一定の割合存在することはできない。地球上ではメタンは単純な生命体や火山などによって生成されている。しかし、火星には活動的な火山などは発見されておらず、地質的な供給源は考えにくい。となると、メタン菌のような微生物による供給の可能性が考えられるのである。
昨年、NASAが火星のメタンガスには周期性があることを発表した。そして、メタンが湧き出る場所の特定にも成功している。あとは、実際に探査活動を行うだけという段階まできているのである。