私たちがこの星の化石燃料消費に取りつかれたおかげで、気候変動の危機にとどまらず思考能力の低下を招くことになるかもしれません。最新の研究結果によると、屋内の二酸化炭素濃度上昇による人の認知能力低下が今世紀中にも起こる可能性があるのです。
もし世界が二酸化炭素排出削減に成功すればこうした陰鬱な未来は当然回避できるのですが、皮肉なことに気候変動の陰に隠れたインパクトが私たちの問題解決能力自体を奪ってしまいかねません。
高濃度の二酸化炭素を含んだ空気は血中の二酸化炭素濃度を増加させ、脳に供給される酸素の量を低下させます。この結果眠気が増し、不安を感じる程度が増え、認知機能が損なわれます。換気の悪い部屋に何時間も座っていると頭がぼんやりして眠気を感じるようになりますが、これも似た現象です。
19世紀以降化石燃料を自由気ままに燃やし始めてからというもの自然環境での二酸化炭素濃度は上昇を続け、現在では過去80万年間の最高値410ppmに達しています。もし今の排出傾向が続けば西暦2100年の二酸化炭素濃度は屋外で930ppm、屋内に至っては1,400ppmに達する可能性があります。これはかつて人類が経験したことのないレベルです。
コロラド大学ボルダー校の科学者は「ジオヘルス」誌に掲載した報告の中で、屋内におけるこの濃度の二酸化炭素は人の認知機能を低下させるに足るレベルだと論じています。彼らの推定では基本的な意思決定能力が約25%、複雑な戦略的思考能力が50%低下することになります。
ペンシルベニア大学で心理学の助教授を務め、研究に参加したアンナ・シャピロ氏は声明の中でこう述べています。「このレベルであれば過去の研究でも顕著な認知能力低下を示す明確な証拠が示されています。過去の文献にはさまざまな知見があって補完が必要ですが、意思決定や計画といった高いレベルの認知機能を司る部位は特に二酸化炭素濃度の上昇による影響を受けやすいのです。」
研究チームは現在の地球環境における排出傾向と都市での局地的な排出量をもとに、屋内外の二酸化炭素濃度に対する影響と、これが人の認知機能に与えるインパクトを調べました。問題が複雑ですべての条件を考慮したわけではないとは言え、現時点で認知機能と二酸化炭素濃度上昇との関係を扱った研究は多くはありません。
「問題が複雑な上、私たちの研究は始まったばかりです。地球(屋外)の二酸化炭素濃度を予測するだけで済むわけではありません。」研究主査を務めたコロラド大ボルダー校のクリス・カルナウスカス准教授はこのように述べています。「問題の探求にはもっと広範で学際的な研究チームが求められます。研究の各ステップを自分たちの陣地で調査しているだけでは不十分なのです。」
reference:iflscience