誰もが知る世界有数の滝『ナイアガラの滝』
毎年、世界中から何百万人もの人々が訪れます。
歴史に惹かれて来る人々やロマンスを夢見て来る人々、自然の驚異を感じたくて来る人々など様々です。
なかには、つい近寄り過ぎてしまう人々もいます……。アメリカとカナダの国境にある三つの滝をまとめてナイアガラの滝というのですが、最も人気があるのはカナダ滝です。
カナダ滝は落差が約57メートルで幅は670メートル。毎秒約280万リットルの水が最高時速109キロで落下しています。
この滝の高さ、落下速度、荒々しい自然の力を考えてみれば、ここに落ちた人間が助かる見込みはないと感じることでしょう。
ところが、かろうじて生きて戻れたケースがいくつかあります。
彼らは何か特殊な技を使ったのでしょうか?それともただ運が良かっただけなのでしょうか?
今回はナイアガラの滝に落ちるとどうなるのかについてご紹介したいと思います。
ナイアガラの滝に落下して初めて生還した人物はアニー・エドサン・テイラー。
時は1921年、テイラーは63歳の誕生日にオーク材と鉄でできた樽に入り、ナイアガラの滝下りに挑みました。
この挑戦は富と名声を得ようとして行ったものでしたが、たいした儲けにはならなかったと言います。
それでも、命知らずの挑戦者たちが後を絶たなかったのです。
一例として、1928年にチャレンジしたジャン・ルシエがいます。
使ったのはゴムとスチールで作った182センチのボール。
内側は32本のチューブで覆われていました。ルシエは無事生還し、その後は観光客に土産物を売って暮らしました。
ですが、テイラーやルシエのように運の良かった者ばかりではありません。
実際のところ、挑戦した16人のうち、生きて戻ったものは9人のみ。
また、現在までにカナダ滝に防具なしで転落して助かったのは5人だけです。1960年に最年少で初の生還者となったのはロジャー・ウッドワードでした。
当時7歳だったウッドワードが乗っていたボートが事故を起こし、少年は水流に呑み込まれました。そして、滝の上から転落してしまったのです。
ウッドワードはすぐに救助され、病院で脳震とうの治療を受けましたが、3日後には完全に快復していました。この出来事は今でも「ナイアガラの奇跡」として語られると言います。
ナイアガラの救助隊員や専門家の大半が、防具なしで生還した例はまったく偶然に幸運だっただけだと考えています。
とはいえ、あなたが何らかの理由で高さ57メートルのナイアガラの滝から投げ出された場合に助かるための方策を教えましょう。
まず覚えておくべきなのは、落ちる前にとても深く息を吸い込むことです。
川底に到達すると落下してくる水の強烈な圧力は言うまでもなく、周りで大量の水が渦巻いているので窒息死する危険があります。
ですから、落下する前に大きく息を吸って時間を稼げるようにしてください。また、頭を守る対策をしましょう。
できれば、足から落ちるような体勢になり、両ひじが鼻の前に来るようにして頭の後ろへ両手を回し、目と口をできるだけ固く閉じてください。
実際には、すべての筋肉を引き締めなくてはなりません。
水に当たる面積を最小にするように両脚を寄せます。落下によって死なないだけでも途方もなく幸運だと言えますが、苦難はまだ終わりではありません。
滝つぼの水温は氷点に近いため、低体温症に陥らないように15分以内に地上に上がらなくてはなりません。
ひどく打撲しているうえ、方向感覚を失っている可能性が高いのですが、落ち着いて集中することができれば、ナイアガラの滝に転落して生還した数少ない幸運な人々のひとりになれるかもしれません。
もちろん、生きて帰るための最善の方法は警告標識に注意を払って、安全用の手すりを無視しないことですけどね。