人類が星間空間に送った二番目の使者は、太陽系の境界からそこは複雑で絶えず変化する場所であるというメッセージを送ってきました。
昨年末NASAの探査機ボイジャー2号は、ヘリオポーズを突破しました。ヘリオポーズとは、太陽風のプラズマが銀河と混ざりあう境界面のこと。6年前、姉妹探査機であるボイジャー1号もヘリオポーズ横断を行いました。
この2つの探査機から得たデータを分析したいくつかの論文が、11月4日付け英科学誌「ネイチャー・アストロノミー」に公開されており、この未開拓な宇宙の領域をこれまでで最も詳しく解析しています。
この2つの探査機が、「60年前には想像すらしなかった驚くべき新しい地へ人類を連れて行ってくれます」と、この研究には関わっていませんでしたがハンツビルにあるアラバマ大学の宇宙物理学者ゲリー・ザンク氏は言います。
2018年11月5日、ボイジャー2号の窓の外の景色が変わりました。この時、探査機は太陽から約178億キロメートル離れていました。これは地球の119倍離れていることになり、周囲のプラズマ密度は約20倍に跳ね上がりました。
太陽からの低エネルギーの原子粒子の安定した流れが消え、宇宙線として知られるはるかにエネルギッシュな粒子のバリアへと変化しました。これにより研究者たちは、太陽系全体の探査を開始して42年、ボイジャー2号が太陽系を包む泡構造を離脱したことが明らかとなりました。
ボイジャー2号は、太陽風が星間プラズマに押し戻される境界であるヘリオポーズを通過した際に、1秒あたりに衝突するこれまで最高の高エネルギー陽子を測定しました。宇宙線として知られているこれらの粒子は、銀河のはるか外側で発生し、通常は太陽の磁場によって屈折します。
最初にそこに到着したのはボイジャー1号でしたが、ボイジャー2号には利点がありました。周囲のプラズマの速度や温度、濃度を測定できるセンサーを搭載していたことです。
それは、「太陽プラズマが星間物質とどのように混ざり合っているかについて我々がさらに理解するのに大きな効果がありました。」とザンク氏は語ります。ボイジャー1号のセンサーは、ヘリオポーズに到着するずっと前にシャットダウンしていたため、研究者たちは他の測定からプラズマの特性の多くを推測する必要がありましたが、直接測定と比べると正確ではなかったでしょう。
2つの探査機は、太陽からの距離よりもお互いの距離の方が遠いのですが、異なる時間と場所でヘリオポーズに遭遇したにも関わらず、いくつかの点が似ています。
地場は境界の内側と外側ではほとんど同じようでした。つまりどういうわけか、予想に反して、太陽の磁場はそれが含まれる銀河系のものとほぼ完全に一致しているのです。
共著者であるメリーランド州グリーンベルトにあるNASAゴダード・スペース宇宙センターのレナード・ブルラガ氏は記者会見で、「1つのケースだと偶然として却下できますが、2回となるとできません。」と語りました。
2機のヘリオポーズ横断には顕著な違いもありました。ボイジャー1号は、ヘリオポーズに到着するまでの2年間、ほとんど停滞した太陽風を運行しましたが、一方、ボイジャー2号は、太陽の粒子の流れが順調で、境界まで素早く安定して運行しました。
ボイジャー1号は、太陽圏に入る銀河の物質に遭遇しましたが、その代わりボイジャー2号は、太陽粒子が星間空間に漏出しているのを目の当たりにします。「我々は同じものを見ても、かなり異なる行動をするのです。」とザンク氏は言います。
これらの結果の多くが何を意味するか理解することは困難です。探査機は、約240億キロメートル離れた2つの境界スポットを調査しました。しかしこの境界は常に変化しています。太陽の11年という活動サイクルに同期して呼吸し、太陽の表面の噴火がヘリオポーズへと進み、物質をかき混ぜます。「これがこの話を複雑にしてるんです。」そうストーン氏は語りました。
新しいデータを待つしかありません。これまで5機の宇宙船が宇宙に到達しました(あるいは到達する予定です)。しかし、信号を送り返してくるのはボイジャーだけです。
1972年と1973年に打ち上げたパイオニア10号と11号は、数年前に活動停止しました。2015年に冥王星を撮影したニューホライズンは、最近、太陽系の端で水素ガス発光の可能性を検出しました。
しかしその宇宙船は、ヘリオポーズに到達する前に力尽きる可能性があります。その間にNASAは、早ければ2030年代には、専用の星間探査機の打ち上げを検討しています。
今のところボイジャーは星間空間における人類の目と耳であり、チームでは両機ともに残り5年ほど任務につけると推定しています。電力はプルトニウムのナゲットから生成した熱によるもので、探査機が冷却すると機器の動作を維持できなくなるのです。
reference: Sciencenews