パナマの新熱帯林で、研究者たちは体の左半身がオスで、右半身がメスという非常に変わったハチに偶然出会いました。
Journal of Hymenoptera Researchに発見を報告し、コーンネル大学率いる科学者チームはパナマのバロ・コロラド島の森で夜行性のハチを研究中に、この珍しい新熱帯ハチ(Megalopta amoena)を発見しました。
この標本は体の半分に別の性別の特徴が現れる雌雄モザイクとして知られています。140種のハチを含む多くの種の動物には、非常に希な状態のものも観察されています。しかし、夜行性のハチにこれが見られたのは初めてのことでした。
「M. amoenaを見つけたときは金を掘り当てたか、宝くじに当たったような気分でした。」コーネル大学の生徒で論文の第一著者であるErin Krichilsky氏は声明で述べています。
この標本で一番驚いたのは、雌雄モザイクがこれほどまでにはっきり見て取れることでした。左半身のオス側の特徴は長い触覚、滑らかな下あご、細い後脚を持っています。一方で右半身のメス側は触覚が短く、下あごは鋭く、後脚は太いのです。
研究チームはさらにハチの概日リズムの分析を試みました。概日リズムとは採餌の時間を調整する体内時計で、これを調査することで、雌雄モザイクが動物の行動にどのような影響があるのかを知ることが出来ると望んだわけです。この調査によって、雌雄モザイクの採餌行動はオス、メス両方と比べてより早く開始したこと、行動時間はどちらかというとメスの行動に近かったことがわかったのです。このことから、この種の採餌行動は脳の右側の影響が強いと言えます。
あなたはきっと、なぜ雌雄モザイクが現れる動物があるのだろう?と不思議に思うでしょう。科学者はこの状況の背後には2つのメインのメカニズムがあると考えます。
生物学的な性別は性染色体の組み合わせで決まります。例えば、人間や他の種なら、オスはXとY染色体を持っていますが、メスはX染色体2つを持っています(虫、鳥などの性別はZとW染色体によって決まりますが、わかりやすいようにXとYで説明しています)。
これは『成功した』精子がX染色体もしくはY染色体のどちらを運んで、常にX染色体を持つ卵子に結びつくかによって決まります。雌雄モザイクが生まれるメカニズムの1つは、2つの精子が偶然2つの核を持つ珍しい卵子に入ることでXYとXXの細胞を持つ胚となる、というメカニズムです。
もう他のメカニズムは、細胞分裂の最初の時期に起こると信じられています。成長が始まると、オスのXY細胞は有糸分裂をして染色体を複製し2つのXY細胞になる前にXXYYとなり、偶発的にX細胞とXYY細胞とに分裂してしまうのです。もし、この異常が細胞分裂の初期に起こってしまうと、細胞の大部分がX細胞とXYY細胞となる可能性があります。
雌雄モザイクは知られているよりも頻繁におこる可能性があり、オスメスの区別がはっきりした種に現れた時にしか気づかないのです。
reference:sciencealert