太陽の光がほとんど届かない深海の暗闇ではほんのわずかな光によって生き物たちの正体がばれてしまいます。
科学者たちは現在までに16種類のウルトラブラックフィッシュを発見してきました。そのどれもが隠れる間やハンティングする間に見つからないような特別な皮膚を持ち合わせています。
99.95%の光子を吸収してしまうという黒以上に黒い皮膚は、薄暗い深海の中で隠れ蓑となります。
煌々と照らすスポットライトの下でもシルエットがわかる程度なのです。
ちなみにカレン・オズボーン氏が最初に興味を持つきっかけとなったのがこの写真です。スミソニア国立自然博物館の動物学研究者として、深海から引き上げられたブラックフィッシュの写真を撮ろうとするたびにフラストレーションが溜まっていきました。
「カメラをどんなに調整しても、照明を当てても光を全て吸収してしまうのです。」とオズボーン氏は話しています。
この好奇心を研究室に持ち帰ったオズボーン氏は仲間と共に、メキシコ湾やカリフォルニアのモントレ-湾でのトロール網漁で集めた18種類のブラックフィッシュの皮膚を注意深く分析しました。
その18種の全てが光の反射率が0.6%以下の皮膚を持ち、うち16種類は0.5%以下でした。さらに、このウルトラブラックスキンは体全体を覆っていて、おそらくこのマントは深海の真っ暗闇の中で獲物や捕食生物から発せられる生物発光の光を吸収するように進化したものでしょう。
「この深海魚の反射率の低さは、最も黒いと知られている生物たちと同等の低さです。」と著者は書き記しており、「ウルトラブラックバタフライの暗さ(反射率0.06%-0.5%)を上回り、最も黒い極楽鳥の反射率(0.05%-0.31%)に匹敵します。」とも述べています。
実際、これらの魚の黒い皮膚は99.96%光を吸収するというかつて科学で知られている中で最も黒い物質として記録を取ったベンタブラックに相当します。
この魚の皮膚構造を分析すると、色素細胞が密に詰まっていて、隙間があったとしてもガムボールマシンのようにほんのわずかであることを発見しました。
ウルトラブラックフィッシュの皮膚構造が内臓付近にも見つかった種類もありました。これは発光する生物を食べた後にその光を外に漏らさないためだと思われます。
「彼らは超効率的かつ超薄型光トラップを効果的に作り出しました。」とオズボーン氏は説明しています。
「光は跳ね返りませんし、光を通しもしません。光はここに入って消えていくのみです。」
一方、ほかの陸上のウルトラブラックアニマルは同様の光反射色素を持っていますが、皮膚内には光受容構造がありこれに頼っています。
吸収されない光をコントロールするために色素そのものだけを使っている生物を発見したのは今回が初めてだとオズボーン氏は話しています。しかもこれは実際のところ一般的な構造なのです。16種もの遠縁の魚がほかの構造に頼らずメラノソームそのものによって光散乱を起こしていることを発見しました。
シンプルなのに非常に効果的なシステムの機能を理解することで、将来珍重されるだろう光学迷彩の改良に役立てることができるかもしれません。
「光を捕らえるような何かしらの構造物を構築する代わりに、光を吸収する色素を最適なサイズと形に作ることで、もっと安価にもっと丈夫な素材で作ることに成功するでしょう。」とオズボーン氏は話しています。
この研究は Current Biologyに掲載されています。
reference:sciencealert