インドのウッタラーカンド州、標高5000メートルを超えるヒマラヤ山脈にあるループクンド湖では、200体以上もの人骨が発見されていた。そして今回その謎を明らかにするべく、国際研究チームが、ループクンド湖から採集した38体の人骨について全ゲノムシーケンス解析を行い、その研究結果を8月20日付けで「Nature Communications」に掲載した。
国際研究チームは、インドのバーバル・サーニー古植物研究所、米ハーバード大学医学大学院、独マックス・プランク研究所などの研究者総勢28名から成る。
人骨は氷が溶ける夏の1ヶ月の間だけ、浅い湖の底に現れる。200体以上の人骨が浮かび上がることから、「スケルトンレイク」や「ミステリーレイク」との呼び名もある。
国際研究チームが、ループクンド湖から38体の人骨を採集して、全ゲノムシーケンス解析を行った結果、人骨の身元は少なくとも3種類の異なる遺伝子グループに分かれており、死亡した時期も1000年も離れた2つの時期に分かれていることが明らかとなった。
解析された38体の内23体は、南アジア出身のもの。14体は、東地中海地方出身のもの。1体は、東アジア出身のものであるとのこと。
さらに、放射性炭素年代測定によって、南アジア出身の23体は800年頃で、その他は1800年頃と年代決定された。
何故、1000年も年代の違う人骨が同じ場所に集まっているのか、ここからは未だ明らかとなっていない。
研究論文の筆頭著者でハーバード大学のエーディン・ハーニー研究員は「東地中海につながる祖先がいたことから、ループクンド湖は、世界中から観光客が訪れる場所だったのではないか」と考察している。
ループクンド湖を訪れたものたちが、偶然自然災害に巻き込まれてしまったのか。200体以上もの人骨の謎はさらに深まるばかりである。