チェルノブイリ原子炉の壁に放射線を「食べる」菌類が大繁殖していたことが判明

イエローストーンの泡立つ熱水泉や、宇宙探査機を組み立てるために極限的に菌を排した無菌室など、命あるものが生き続けることがとうてい叶いそうにない場所でも、何かしらの生命体らがどうにかして生き延びてきました。こんな所でと思うような場所で力強く繁殖していることさえあります。「生命というのは、なんと言うか、存続する道を見つけ出すものなんだよ」と、かつて言った賢人がいました(訳注:映画『ジュラシック・パーク』でイアン・マルコム博士が “… life, uh, finds a way” と言う場面があります)。そうです。今も放射線を放つ、崩壊した原子炉の壁にさえ、珍しい種類の菌類が猛烈に繁殖しているのです。

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現に、有名な1986年のチェルノブイリ原発事故によって極度に放射能汚染された環境下で多くの菌類の種が生息していることがわかっています。廃墟となった原子力発電所の周辺では、合計98属、約200種の菌類が生息していることが報告されています。その中には繁殖力が強いものもあれば弱いものもあります。

これらの菌類のなかには、にやりと笑って高レベルの放射線を受け流すばかりでなく、実は放射線自体を「食べる」ものも少数ながらあります。放射線を養分化する「黒色真菌」として知られる、これらの少数精鋭の菌類には、成長するためにγ(ガンマ)線を化学エネルギーに変換するメラニンが備わっています。このメラニンは紫外線からヒトの肌を保護するのに役立つ色素と同じものであり、これらの菌類においても有害な放射線から身を守るために使われていると考えられます。

「多くの商業用原子炉では、放射性水がメラニンを保有する生物(黒色色素沈着のある生物)によって汚染されます。そのような生物が放射性水の中でいったい何をやっているのかはわかっていません」と米アルベルト・アインシュタイン医科大学の微生物学者、アルトゥーロ・カサデヴァーイ氏は科学雑誌『サイエンティフィック・アメリカン』の記事(2007年)で述べています。

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カサデヴァーイ氏が率いる研究チームの調査により、チェルノブイリ原子炉跡で見つかった、放射線を食べる菌類が自然界にもともと存在しているレベルの約500倍の量の電離放射線に耐えられることがわかりました。調査されたのは、『クラドスポリウム・サファエロスペルマム(Cladosporium sphaerospermum)』『クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)』『ワンギエラ デルマティティディス(Wangiella dermatitis)』の3種類です。

これらは、耐性があるのみでなく、放射性環境下にある方が速く成長するとみられています。他の調査では、これらの菌類が、まるで餌に手を伸ばすかのように放射線源の方へ芽胞と菌糸を向けることが確認されているのです。

「チェルノブイリ原発事故後に最初に出現した生物が菌類でした。あのような環境下で菌類がどのようにして繁殖することができるのか、我々、科学者は知りたいと思ったのです」と、これらの菌類について詳細な調査を行ってきNASAジェット推進研究所の上級科学研究員、カストゥーリ・ヴェンカテスワレン氏は2016年にマザーボード(雑誌VICE のオンライン版)で述べています。

さらにヴェンカテスワレン氏は「事故現場で収集した菌類は、立ち入り禁止区域外で収集した菌類より多量のメラニンを保有していました」と報告しています。「これは、菌類が放射活性に適応したことを意味しています。そして、その内の2割もの菌類が放射線を養分化することが確認されました。つまり、放射線に向かって成長していたのです。放射線が大好物なのです」

黒色真菌はなかなかの旅行者でもあります。チェルノブイリで採取された8種の菌類が2016年にスペースX社のロケットに乗って国際宇宙ステーションに運ばれました。

宇宙空間で培養する目的は、黒色真菌が非常に高レベルの放射線に耐えられる仕組みを解明することでした。また、放射線環境下で繁殖する菌類の調査は強い宇宙線の降り注ぐ環境で活用するアイデアを触発してもいます。たとえば、宇宙飛行士が長期間にわたって宇宙飛行をする場合や人類が他の惑星に入植したときに食料源として利用できるか研究することも考えられています。

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reference:iflscience