米テンプル大とネブラスカ大の研究チームがエイズウイルス(HIV)に感染したマウスのゲノムからHIVを完全除去することに成功したことを7月3日に発表した。
論文は、雑誌「Nature Communications」に掲載されている。
Sequential LASER ART and CRISPR Treatments Eliminate HIV-1 in a Subset of Infected Humanized Mice
https://www.nature.com/articles/s41467-019-10366-y
Howard Gendelman、Kamel Khaliliたちの研究チームは、『長時間作用型の薬剤送達システム』と『CRISPR-Cas9』による遺伝子編集技術を組み合わせることでHIVを除去できるのではないかと考えた。
体内で抗ウイルス剤をゆっくりと放出させて数日間にわたりウイルスの活動を抑制するとともに、HIVに感染した細胞のDNAのうちの関連する部分を切断してウイルスの遺伝コードを除去するという仕組みである。
例えると、身体の隅々まで爆弾を仕掛けて爆破した後に、生き残ったウイルスどもを直接倒すというような感じだろうか。(例えられているかわからない笑)
この併用療法による結果、全体の約3分の1のマウスでHIVが検出不可能なレベルまで低下した。今回の研究では、これらのマウスをいくつかの手法で調べ、HIVに感染した細胞・組織部位で、治療後の5週間、HIVは検出されなかった。
現在、エイズ患者達はARV(抗レトロウイルス薬)を定期的に飲み続けることにより、なんとか伝搬の可能性が減っている。しかし、ARVは正常な細胞を感染させようと活発に働いている最中のウイルスに対しては高い効果を発揮するが、活動休止中のウイルスにはあまり効き目がないのである。
そして、エイズウイルスはARVのこの特性を『学習』するように進化を遂げつつあり、いずれ変異してARV耐性を獲得する恐れがあるのだ。
そんな中、今回の研究はエイズ患者に手を差し伸べるような結果であり、今後の展開を待ちわびている人も多いことだろう。
研究チームは技術を改善し、霊長類での実験を経て臨床試験を目指している。HIVに感染した場合、現在は抗ウイルス薬を長く服用し続ける必要があるが、体内からHIVを除去できれば、抜本的な治療法になる。
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