1986年に発生したチェルノブイリ原発事故の影響により、立ち入り禁止区域とされていた場所で収穫された穀物と域内の水を使用して、ウォッカ「ATOMIK」が製造された。
イギリスとウクライナの研究チームは、原発事故の後に放置された立ち入り禁止区域の一部で農作物栽培を行なった場合においての放射線の影響や、同域内で栽培された作物が安全に利用できるかなどの調査を3年間に及び行なった。
そして、研究に携わるポーツマス大学のジム・スミス教授らが、立ち入り禁止区域内で収穫された穀物の放射線量を検査したところ、ウクライナの定める極めて厳しい基準値をわずかに上回る程度の放射能物質が含まれていることが明らかとなった。
微量の放射性物質の含まれた穀物を食用にすることはできないと判断した研究チームは、それらからウォッカを作ることに。
研究者らは、蒸留の過程で放射性物質が完全に取り除かれると主張し、サウサンプトン大学などの複数の検査機関に検査を依頼したところ、ATOMIKからは天然レベルの炭素14しか検出されず、通常のウォッカと比較しても安全面での問題はないことが証明されている。
また、ウォッカを製造する際に使われる水は域内の帯水層に含まれる鉱水を使っている。原子炉から10キロメートル離れた地点に位置しており放射線の汚染も問題ないそうだ。
研究チームを率いるスミス教授は、事故により引き起こされた立ち入り禁止区域内の経済発展が妨げられたことを問題視しており、ATOMIKの販売利益の75%を事故の影響を受けた地域に還元される計画。
ATOMIKは現在のところ試作品として1本のみであり、2019年末までに500本が製造される予定で、チェルノブイリの観光客へと販売されるそうだ。
reference: livescience