時空のある一点から別の離れた一点へと直結する空間領域でトンネルのような抜け道である”ワームホール”を作り出す方法が、オンラインジャーナル「arXiv」に掲載されたカリフォルニア大学の研究論文によって明らかにされた。
ワームホールは、何もかもを飲み込む”ブラックホール”と何もかもを吐き出す”ホワイトホール”が対となった理論上の存在である。しかし、人類はまだホワイトホールの存在を確認できていない状況にある。
そこで、物理学者が注目したのは「電荷を持ち得る」というブラックホールの特性だ。帯電したブラックホールの内部は奇妙な構造になっており、重力の特異点が引き延ばされ、歪められており、反対の電荷に帯電したブラックホールへのトンネルを形成しているとのこと。
このトンネルがワームホールとなるのだが、2つほど問題点が存在するという。それは、正と負に帯電したブラックホールが引き寄せられ合体してしまうということ。
この問題を解決するために、物理学者はちぎれないという特性を持つと考えられている「宇宙ひも」を使うことでその合体を防ぐ手法を考えた。無限に長い宇宙ひもの片方をブラックホールへ、もう一方をペアのブラックホールへと結びつけることで綱引きのような関係になり、相対位置を固定することができる。
2つ目の問題として、ワームホールの不安定さだ。しかし、これも宇宙ひもが解決してくれるとのこと。
代表的な宇宙ひもには、1次元の細長いものと、輪っか状に閉じたものがあるのだが、次は輪っか状のものを使う。輪っか状の宇宙ひもを、2つの荷電ブラックホールの間に置くことで、負の質量を持つ物質と同じような効果を発揮することで、ワームホールの安定性が増すそうだ。
これで2つの問題が解決されるのだが、実はもう一つ解決しなければいけないことがある。それは、宇宙ひもが理論上の存在であるということ。最後の課題となる宇宙ひもの発見は、いつか実現されるのだろうか。
reference:livescience