健康な63歳の男性が飼い犬に舐められた後に多臓器不全を伴う敗血症ショックのため死亡したという事例の詳細が最近報告されました。通常なら噛まれることでかかる感染症であり免疫系の弱い人、アルコール依存症、脾臓を外科手術で取り除いた人が死亡に至る傾向があるというものです。
一体男性の体に何が起こったのでしょうか?
あるドイツ人男性は熱や息切れなどインフルエンザのような症状がありそれ以来体調を崩し始めたと言います。しかし、症状が出てから3日後には血管の損傷による紫色の斑点が顔に現れ、手足の末端が痛むようになったため病院に駆けつけました。診察で医者は彼の足の皮膚の下側にも出血していることに気づきました。
男性はしばらく海外に出たり病院を利用していないことから医者は髄膜炎を疑いましたが、頭痛や肩こりなどの特徴的な症状がないためさらに検査を行なったそうです。血液検査によって血小板や白血球の数値が低く敗血症の兆候が見られたため、彼は集中治療室へ移送されることになったのです。彼はさらに腎臓、肝臓の機能も低下し排尿ができなくなっていました。
診断の結果、敗血症と、紫斑病(皮膚下の細い血管での血液凝固による致命的な血斑)と診断されました。CT検査では皮膚に感染症が確認されませんでしたが、医師は様々な抗生剤を投与しあらゆる感染症に対処しました。それにも関わらず、彼の病状は悪化して行きました。彼の心臓は停止したのですが、蘇生に成功し機械的に呼吸を制御することとなりました。彼の血圧も低下した状況だったとのことです。
4日目に原因を突き止めることができました。彼はカプノサイトファガカニモルスに感染していたのです。これは通常犬や猫の口内にいるバクテリア。あらゆる抗生剤の投与も虚しく治療開始からから16日後この男性は死亡してしまいました。この症例はヨーロピアンジャーナルに内科症例報告として記録されています。
この記事の著者はこの症例は非常に希なものであると述べています。通常は免疫不全の患者が感染するケースがほとんどで死亡率は4分の1だそう。また動物に噛まれることなく、ここまで重度に感染したことは極々稀であるとも記されています。
尚、この記事では「ペットの飼い主は通常の感染症の症状を超える異常が見られる場合は早急に医師の診断を仰ぐように」と書かれています。つまり呼吸の異常や皮膚下の出血などの症状がある場合です。
一方、これらの症状が見られる患者に直面した医師は検査結果が確定する前であっても患者が犬や猫に触れた可能性があるかすぐに調査し、抗生剤投与治療を開始する必要があるのです。
reference: IFLscience