これまでの知識では信じられない熱を伝導しないで電気を伝導する画期的な金属が、発見されました。2017年に発見されたこの金属は、「電気を通す導体は、熱も通す」というヴィーデマン・フランツの法則と矛盾していることになります。
アメリカの研究チームによれば、この金属が、二酸化バナジウム(VO2)ではなく、シースルー絶縁体から摂氏マイナス67°Cの温度で導電性金属に変わる珍しい金属であることでですでによく知られているものであるそうです。
2017年1月、バークレー研究所材料科学部門の主任研究者ジュンチャオ・ウー氏は、「これは全く予想外の発見でした。」と述べています。
この発見は、従来研究されてきた教科書法の修復の必要性を示しており、導体の新しい電子的挙動を理解する上で非常に重要になるでしょう。
この予想外の性質を持つ金属は、導体への常識を覆すだけでなく、私たちの生活にとても便利に使用されることが考えられています。この金属は、エンジンや家電製品から発生する熱を電気にしたり、ウィンドウカバーも今までよりも効果の高いものをを作ることができ、ビルの中を涼しく保つことができるようになります。
研究者は今までにも、電気を伝導する他の金属を発見していましたが、その金属は、数百度以下の温度でのみ使用可能なため、実用的なものではありませんでした。
一方、二酸化バナジウムは、室温を上回る暖かい温度に使用することが可能なため、より実用的であるといえるでしょう。
研究チームは、この特別な性質を明確にするために、二酸化バナジウムの結晶格子内で電子がどのように動くか、またどのくらいの熱が発生しているかを実験しました。
驚くべきことに、二酸化バナジウム中の電子に起因する熱伝導率は、ヴィーデマン・フランツの法則によって予測された量の10倍以下であることがわかりました。
電子が物質内を移動する同期の仕方に理由があるのでしょう。
研究の結果、二酸化バナジウムの電子は、通常の金属のように個々の粒子としてではなく、流体のように、一体となって動いていることがわかりました。
「通常の金属電子の熱は、動きがランダムです。個々の電子が移動できる非常に多くの異なる構成があるので、効率的に熱を輸送します。対照的に、二酸化バナジウム中の電子は、マーチングバンドのような動きで、電子がランダムに動く構成が少ないので、熱伝達を妨げます。」と、ウー氏は言います。
興味深いことに、研究者が二酸化バナジウムを他の材料と混合することで、電気と熱の両方の量を「調整」することができ、これを応用して、二酸化バナジウムが、私たちの生活に役立つことが期待されています。
例えば、二酸化バナジウムに金属タングステンを加えることにより、金属の温度を下げ、熱伝導体の改善が見られました。
つまり、二酸化バナジウムは、一定の温度に達したときに熱を伝導し、その熱を放散することができ、かつ絶縁体(電気あるいは熱を通しにくい性質を持つ物質)にもなるのです。
また、二酸化バナジウムは、摂氏30度において透明であるという特有の性質があり、可視光に対して、摂氏60度を超える赤外線を反射することができるため、エアコンなしで温度を下げる窓のコーティング剤としても使用できます。
「熱伝導率を調整することで、熱伝導率が高いため、暑い夏に効率的かつ自動的に熱を放散でき、かつ低温での熱伝導率が低いため、寒い冬の熱損失を防ぐことができます。」
更なる商業化の前に、この特有な物質に関してより多くの研究を行う必要がありますが、二酸化バナジウムが、温度を調節できる特性があるということが分かっているというのは、期待が高まります。
reference: sciencealert