南インドの大都市チェンナイにある国内有数の海岸が先月29日から危険な白い泡に覆われています。出現から3日が過ぎても泡は消えず、同国で新たな汚染災害が発生しています。
地元の人々の憩いの場である砂浜、マリーンビーチの波打ち際に突如現れた雲のような白い泡の中で子どもたちが遊んだり自撮りをしたりしていますが、泡は酸性の臭いを放っており、漁師たちは近海に行かないよう当局に指示されています。
泡に触れると皮膚トラブルが生じる可能性があると医師は警告しています。泡は毎年雨季に出現するとは言え、今年は特に大量に発生しました。
市街地に沿って伸びる、このインド最長のビーチは大勢の家族連れでにぎわいますが、警告が行き渡っておらず、有毒な泡に足を埋もらせながら子供たちがはしゃぎまわるのを親たちは傍観しています。
タミル・ナードゥ州汚染管理局は、海外沿いに数キロメートルにわたって広がっている泡から試料を採取し、成分分析をしていることを発表しました。
チェンナイにある国立沿岸研究センターのプラヴァーカー・ミシュラ研究員は「泡にまみれたら体に良くないことは確実なのですが、危険性を理解してもらえていません」と言います。ミシュラ研究員はこの数年、泡が現れるたびに量が増えていることに着目してきました。
2017年のほぼ同時期に河川汚染により河口で魚が大量死した出来事があったことから、同様な事態の再発に当局は警戒を強めています。
漁師のジャヤシーランさんは、最近はやっと獲れた少量の魚でさえもお客が買いたがらないと嘆いています。「ここの魚は汚染されているとみんなが思っているんです。私は賃金をほとんど払ってもらえなくなりました」
マリーナビーチは1世紀以上にわたってチェンナイ市民にとって暮らしの拠りどころとなってきました。週末には何万人もの人々が海辺に押し寄せます。しかし、かつては自然の景観地であったこの場所も、同国の経済成長から派生する問題の一つである水質汚染が起きているのです。
今回の大量の泡の発生は、この数日の豪雨によって未処理の下水やリン酸肥料が海に流れ込んだことが原因だと専門家らはみています。
ミシュラ研究員によると、泡の大部分は洗剤の残りかすに他の廃棄物質が混ざったものだということです。
「チェンナイなどの大都市では、下水が40パーセントしか適切に処理されておらず、残りの下水が海に流れ込んで、このような事態になっているのです」
同研究員は海水の汚染度を定期的に測定するためのブイを設置しようとしています。これは、ひどい大気汚染に悩まされているデリーの汚染観測ネットワークに相当するものです。
インドのビーチにとっては海面上昇より汚染が脅威となっており、汚染の原因物として、下水、魚を死なせるマイクロプラスチック、砂浜を覆うレジ袋やプラスチックのコップなどのゴミが挙げられると同研究員は指摘しています。
最近、ボランティアの人々がチェンナイの海岸で行ったゴミ拾いでは、わずか2時間で1トン近くのプラスチック・ゴミなどの廃棄物が集まったということです。
reference: sciencealert