生体組織と同じような特性をいくつも持つゼリー状物質をオーストラリア国立大学(ANU)の研究チームが開発しました。ヒドロゲルの一形態であるこのゼリーは自己修復機能があるのみならず、非常に強度に優れているとともに形を自在に変えられるという特徴があるため、人工の皮膚や靭帯、骨を作る材料となり得るのです。
ヒドロゲルは強力に水を吸収することのできる三次元的な高分子構造体であり、含水率は90パーセントを超えます。現在までに様々な物の材料として使われてきましたが、その分野は生体工学、自己灌注型の創傷被覆材、コンタクトレンズ、おむつ、土壌保水、義肢など多岐にわたります。
しかし、もっとも科学者たちの注目を集めているのは、生体組織に似せられる、その特質です。時が経過しても変わらない静特性の面のみでなく、刺激に反応して体積が変化する振るまい方も生きた体に似ているのです。
ANU化学研究部門のルーク・コナル准教授が主導する研究チームは、ゼリー状物質が皮膚のように自己治癒したり、人工筋肉として働いたりするのを可能にする動的な化学結合をこの研究に取り入れました。
ANUによると、この新開発のゼリー状物質を基にした材料を使って次世代のソフトロボット(やわらかな感触のロボット)を製作する方法を見出せるかもしれないとのことです。
さらに、ヒドロゲルは3Dプリンターの造形インクとして使うことも期待できます。また、高度な医療移植片や泳ぐことのできるソフトロボットを作ることを目指して機能を高めることも可能です。
「特殊な化学的物質を使って、ヒドロゲルの構造を作り替えました。この物質は損傷を受けた後に人間の皮膚と同じように自己修復ができます」とコナル准教授は解説しています。
「ヒドロゲルは、普通はもろい物質なのですが、私たちが開発した素材は非常に重い物体を簡単に持ち上げることができるほど強度が優れている上、人間の筋肉同様に形が変わります。
そのため、私たちがソフトロボティクスと呼んでいる研究分野で人工筋肉を作るのに適しているのです。柔軟性と強度に加えて自己治癒力があるこのヒドロゲルは、身体装着型デバイスなどの様々な生物医学装置を作るのに理想的な材料となるはずです」
reference: new atlas