NASAの頭脳のおかげでコロナウイルス蔓延への戦いが違った様相を帯びてきそうです。カリフォルニア州パサデナにあるNASAジェット推進研究所(JPL)の技術者がわずか37日で人工呼吸器のプロトタイプを開発し、今週ニューヨーク市マウントサイナイ医科大学で主要テストをクリアしたとの公式発表がされました(4月23日木曜日発表)。
JPLのマイケル・ワトキンス所長は声明の中でこう述べています。「我々の専門は宇宙船であって医療機器ではありません。(JPLはNASAで無人探査を担当する機関)しかし高い技術力、精密試験と迅速なプロトタイプ作成は得意とするところです。」「JPLの職員は医療関係者や幅広いコミュニティーを支えられるかもしれないと考え、発明の才と専門性、そして熱意を分け合うのが自分たちの義務だと感じたのです。」
新たに開発された機械はVITAL(Ventilator Intervention Technology Accessible Locally)と呼ばれ、NASAによれば短期間で製造可能とのことです。VITALは設計が柔軟で、新型コロナウイルスCOVID-19の患者を扱うため世界各地のホテルや展示会場に作られた臨時病棟でも使うことができます。
患者が重症化すると呼吸器障害に陥るため、このところ人工呼吸器は貴重なリソースとなっています。需要が極端に増えており、フォード、GM、スペースX、テスラといった企業が優秀な技術者を配して人工呼吸器を設計開発させているほどです。JPLも参入し、その成果がマウントサイナイ医大で検査されているのです。
医科大学ヒューマンシミュレーション研究所の開発部長で麻酔学、手術鎮痛薬学、遺伝ゲノム科学の准教授を務めるマシュー・レヴィン氏は、同じ声明の中でこう述べています。「高機能のヒューマンシミュレーション研究所で検査した結果に大変満足しています。NASAのプロトタイプは患者のさまざまな状態をシミュレーションした中で、期待通りの成績を上げました。VITALを米国内外で新型コロナウイルス患者の人工呼吸に使用しても安全だと検査チームは考えています。」
VITALは病院で使われる既存の人工呼吸器を置き換えるものではなく、それを補完する位置づけです。病院の人工呼吸器は何年もの間運用され、さまざまな病気の患者に使用されます。NASAによればVITALは新型コロナウイルスに特化した機械で、耐用期間は3から4か月とのことです。NASAの健康医学主任であるJ.D.ポ-ク氏は声明でこう述べています。「強力な人工呼吸器を必要とする新型コロナウイルス患者はICUで治療されることになります。VITALを使う目的は患者が重症に陥り、高性能の人工呼吸器を必要とする割合を減らすことです。」
NASAはアメリカ食品医薬品局の認可を迅速に取得すべく動いています。VITALはライセンスフリーとなる予定で、医療機器メーカーと製造面での提携も視野に入れているところです。
reference:livecsience