垂直なモノの表面を登り、天井から逆さ吊りもできる動物たちの能力は、エンジニアやSF作家などの心を触発してきました。科学者たちはヤモリのような生き物がどうやって物理の法則に反しているかという謎を解き明かし、エンジニアたちはそれを再現しました。しかし、そのような商品を地元のスーパーで見たことはありません。なぜなら製造するのが難しく高額すぎて一般に広く使われないからです。ですが、研究チームは壁を登るための良い意味で簡単な方法を見つけたようなのです。
重力に反して壁を登るカギとなるのが微細な剛毛なのです。ヤモリの隆起のあるつま先はフィブリル、またはスィーティーと呼ばれる剛毛で覆われていて、物質の原子に吸着します。吸着力は弱いのですが、体に対して不釣合いに大きいつま先に剛毛が密集しているため死んだ後でも体重を支えることができるほどです。そして壁に密着した足の角度を変えることで壁から離れることができます。
人間は小さな爬虫類に比べてかなり大きいため、私たちの手を覆うフィブリルではスパイダーマンとなるには不十分なのです。しかし、人間の手の10倍の大きさのパッドを使えば垂直なガラスの壁を登れることが実演されました。
過去にはごく小さなテンプレートを作り、硬化するとポリマーになる液体で満たす方法に頼っていました。その製作過程は時間がかかる上に高価でした。ほかのクライミング・パッドも軍事研究者によって作られましたが、その方法は開示されておらず、もし安価に作れるものであれば国家機密となるでしょう。
ジョージア工科大学のマイケル・ヴァレンバーグ博士は、滑らかな表面に同じポリマーを注ぎ、一部硬化したあとに適切な形のプレスで刷り込む方法でできることを発見しました。ちょっとした変更ですが、ヴァレンバーグ博士はグリップを改善できただけでなく、パッド製造のコストも改善できると考えました。
「鋳型技術は高額になり、時間がかかります。そしてテンプレートからヤモリのような素材を製造する方法は接着面の質を選ぶという問題点があります。」とヴァレンバーグ氏は声明で述べています。その方法はACS Applied Materials and Interfacesの中で述べられています。
命知らずが高層ビルの住人にショックを与える以外にも、パッドは多くのことに応用できます。ロボットクリーナーなら今までルンバが行けない場所を掃除できますが、最大市場となるのは製造ラインでしょう。「テフロンのように例外もありますが何にでもくっつきます。
持ち上げたいもののためにグリッパーを準備する必要がないので製造業には明らかに利点となります。」とヴァレンバーグ氏は話しています。「ヤモリにインスパイアされた粘着剤なら箱のような平らなものを持ち上げてから、振り返って今度は卵や野菜のような丸いものも持ち上げられるのです。」
reference:iflscience