SARSに似た新型ウイルスは中国国内での死者が6人に達し感染は300人ほどになりました(2020年1月21日現在)。
春節のため人が大移動することで感染が拡大することが懸念されています。多くのアジアの国々とアメリカでは発生源である中国武漢市からの旅行客のために新たに検疫システムが導入され始めています。
このウイルスはこれまでになかったコロナウイルス株とみられています。その症状は幅広く、一般的な風邪の症状から2002年〜2003年の間に中国本土で349人、香港では299人が死亡したSARSのような症状まであります。
パリにあるパスツール研究所免疫部長のアルノー・ファンタネは、現在のウイルス株は遺伝的には80%SARSと同じであるとAFP通信にコメントしています。
中国はすでにこの新型ウイルスのゲノム配列情報を国際科学団体に提供しています。今のところこのウイルスは『2019-nCoV』と名付けられているとのことです。
月曜日に世界保健機構は動物が感染拡大の『主要な感染源』であるだろうと発表し、武漢市当局は海鮮卸売市場が流行の中心地であると特定しました。
しかし中国海鮮卸売市場には行ったこともない人が感染、つまりウイルスが人から人へと感染していることを確認しました。
キングスカレッジ・ロンドンのマクドーメット博士は、ウイルスは咳やくしゃみによる飛沫感染で拡大したようだと話しています。
香港大学の医師は初の論文の中で、ウイルス感染をモデル化し武漢市での感染は1343件あったと推定しました。これはロンドンのインペリアル・カレッジが予測していた1700件と似た数字です。どちらも公式発表よりもかなり多い数です。
そして、SARSと比べ症状は穏やかで、死亡者数は比較的少ないと専門家らは話しています。
武漢市当局によると、市内に200人ほどいる感染者のうち25人はすでに退院しているそうです。
「この病気をSARSと比べるのは難しいです。」と中国国民健康委員会の有名な科学者、鐘南山氏は今週の記者会見でコメントしました。「症状は軽度ではあります。肺の状態はSARSのように酷くはありません。」
しかし、ウイルスの症状の軽さゆえ不安があります。
中国は春節を迎える準備をしており数億人が家族に会うために国内を移動するため感染が拡大します。
ジュネーヴ大学国際保険研究所ディレクターのアントワン・フラオー教授は、このウイルスはほとんどの人にとって症状は軽いので症状に気づく前に遠方に出かけてしまうという『逆説的な怖さ』があるとコメントしています。
WHOは水曜日に『国際的に懸念される緊急事態』を宣言するべきか、宣言した場合の対処方法を決定するための会議を開きました。
この非常事態宣言は過去に数える程しか出されていません。2009年に流行した豚インフルエンザとして知られるH1N1や、2014年〜2016年にかけて西アフリカを襲ったエボラ出血熱の時に宣言されました。
中国政府は火曜日、SARSの発生と同様のカテゴリーに分類されると発表しました。つまり、診断されたら強制的に隔離され、旅行時には検疫を行い水際対策が必要ということです。
もしWHOが緊急事態宣言を出すことになれば、武漢市で発生したウイルスはエボラ出血熱などと同様、数少ない深刻な感染症と分類されるでしょう。
reference:sciencealert