ハエの群れを駆け抜けた68歳の女性の目から多量の寄生虫が取り除かれるという報告が医学雑誌「Clinical Infectious Diseases」に掲載された。
2018年3月、68歳のアメリカ人女性が、右目に刺激を感じました。水道水で洗い流すと全長約1.3センチメートルの1匹の線虫がうごめいていたのです。
さらに自分の目をよく見ると、2匹目の線虫がうごめいているのを見つけ、水で洗い流しました。翌日、眼科へ行くと、さらに3匹目の線虫が見つかり、摘出されました。
眼科医は、当時カリフォルニア州モントレー郡に滞在していた患者に、引き続き水で目をよく洗い流すように言い、もし再度発見したら自分の手で取り除くように説明しました。
医学雑誌「Clinical Infectious Diseases」に掲載された詳細によると、患者は細菌感染を防ぐために軟膏も処方され帰されました。しかし、ネブラスカの自宅に戻っても、両目に異物感が続き、再度眼科医を受診したそうです。
そして4匹目の線虫を摘出し、新たな治療を続けた結果、ついに線虫を全て除去することができたとのこと。
あまりにゾッとする話です。しかし、この症例で本当に恐ろしいのは、そもそも線虫がどのようにして彼女の目に取り付いたのかということです。なんと、彼女がランニング中にハエの群れの中を通ったことで、寄生虫が付着したと考えられています。
「患者はトレイルランナーで、2018年2月初旬にカーメルバレー・リージョナルパークの険しいトレイルの角を曲がったところで、小さなハエの群れに突っ込んだ覚えがある」と著者が、症例報告に記しています。
彼女は、顔からハエをはたき落とし、口からも吐き出したとのこと。
分析を行うために送られた線虫の検体は、牛の目に寄生する「Thelazia gulosa」のメスであると識別されました。
さらに恐ろしいことに、生育した幼虫を含む卵が子宮内で確認されました。このことはヒトがThelazia gulosaの繁殖に適した宿主であることを示しているのです。
アメリカ疾病予防管理センターの寄生虫専門の著者は、寄生虫がヒトで発見されたのは、これで2度目だと報告書に書いています。最初の事例は、2018年2月に12匹の寄生虫を女性の目から摘出したもの。
著者は、通常牛の間でハエを介して広がる寄生虫が、なぜ今、人間に寄生したかは不明だと語りますが、おそらく家畜牛の寄生虫が増加していることも原因であるのかもしれないと推測しています。
reference: IFLscience