死者数増加と株価暴落、そして全国の学校での臨時休校の要請をニュースで見れば、日本人がコロナウイルスに対してパニックとは言えないまでも不安を覚えるのは当然のことでしょう。
COVID-19として知られるこのウイルスはコウモリによって媒介され、2019年の終わりに中国・武漢の市場で人に感染したと考えられています。現在世界で少なくとも2,670人が死亡し、ウイルス感染者は81,000人からさらに増えそうな勢いです。
心理学者によれば、コロナウイルスに関する不安は未知のものに対する反応として理解できるものの、過度に影響を受けやすい人もいるとのことです。対抗するためには、ウイルスに関するメディアの視聴を1つか2つの信頼できる情報源に限れば良いといいます。
カーネギー・メロン大学の心理学者で公衆のリスク認知を専門とするバルーフ・フィッシュホフ教授によると、未知のものを恐れるのは当然である一方、インフルエンザは未知とは言えないとのことです。
ただ未知への恐怖が潜在的な危険から人を守る本能だとしても、今回の場合はSARS、鳥インフルエンザ、エボラ熱など海外で発生した感染病と同様、外国人への憎悪によって不安があおられる可能性があります。
フィッシュホフ教授はポッドキャストの中で、「エボラ熱やコロナウイルスのように健康被害が海外から来る場合、観測能力の不足や時には全体主義体制が原因となり、国内の健康被害と比べて情報が不足する」と述べています。
「私たちはまた、この状況を異なる人種への憎悪を燃え上がらせる絶好の機会と考える人々に影響されやすくもあります。個人個人でこれを乗り越えなければなりません。」
感情、性格やメンタルヘルスの状態と同様、コロナウイルスに不安を感じる度合いも人によって差があります。
ノースカロライナ州チャペルヒルの臨床心理学者であるジュリー・パイク氏は不安障害の専門家ですが、健康不安や全般性不安障害を持つ人はコロナウイルスのような潜在的脅威に対してより不安を抱く傾向にあると言います。「なぜならこうした人たちは脅威を過大評価し、対応能力を過小評価しがちだからです。」
「明確な解決法が示されないと彼らは心配になり、不安を鎮めて不確実性を根絶するためにさらなる情報を求めようとします。」
以前に伝染病でトラウマを経験したことがあると、コロナウイルスがそれを連想させ、ニュースが不安の引き金となることがあります。過去の研究でSARS感染者との接触から心的外傷後ストレス障害やうつ状態となる例が示されていますが、知人に発病者がいる場合にも感情的に影響されやすいのだと、ポッドキャストを主催するケイティン・ルナ氏は指摘します。
フィッシュホフ教授もポッドキャストでこう述べています。「私たちには愛する人、気にかける人がいて、病気になれば心配するでしょう。ある点で私たちは病人よりも無力だと言えます。病人は力を絞るかもしれませんが私たちはただ心配することしかできません。不安を生じるのは人として自然な、ある意味健康な反応なのです。」
パイク氏は脅威を過大評価し対応能力を過小評価する時にパニックが起きることから、「ニュースがコロナウイルスの急速な拡散と有効な治療法がないことを繰り返し強調するのを見れば」燃え上がる不安に油を注ぐことになると言います。
「一番良いのはしっかり手洗いをして、病気と疑わしい人がいれば避けるなど、他のウイルスと同じように身を守ることです。感染が頻繁に起こる地域にいるのであれば何が起きているのか概要を把握するのは構いませんが、メディア、特に口頭の情報や信憑性が疑わしいものについては視聴を制限することが重要です。」
フィッシュホフ教授によると、一方で不安障害を起こしやすい人や差別被害者に対するサポートも重要であり、危機の際にはパニックを起こすのではなく、寄り添うのが人間の特質であることを忘れてはならないとのことです。
ポッドキャストで彼はこう述べています。「パニックを研究する人たちは・・・実際にパニックが起こることはまれだと考えています。危機的状況では人はむしろお互いに寄り添って助け合い、勇敢に行動することが多いのです。」
reference:sciencealert