ウォンバットがオーストラリア森林火災の最中、まるでレスキュー隊のような行動をしていたという投稿がいくつか上がっています。
その投稿では、ウォンバットが自分たちの巣穴を他の動物たちと『シェア』していたと言われており、他にも危機回避のためにオーストラリア政府よりも働いているというものもありました。
環境保護団体のグリーンピース・ニュージーランドは、「無数の小さな動物たちが死を免がれたのはウォンバットが巨大で複雑な巣穴をシェアしてくれたおかげだという報告がありました。また、ウォンバットが『誘導』するのを見たという報告もありました。」とコメントしました。
なんだかまるでお伽話のようだと思いませんか?こういった話は本当なのでしょうか?
まず、ウォンバットが小さな動物を安全に誘導していたという話に裏付けはありません。グリーンピース自身も後に「この話を投稿したのですが真実ではないことがあきらかになりました。」と謝罪し訂正しました。
ウォンバット財団のディレクター、ジャッキー・フレンチ氏は誘導していたというのは疑わしいとコメントしています。
「ウォンバットはひどい近視です。主に食べ物と泥しか見ていません。誘導するのは難しいでしょうし、私自身も見たことはありません。」
しかしながら、その可能性を完全には否定してはいません。
「ウォンバットの行動は通常食べる、寝る、引っ掻くといったことに限られています。しかしまれに必要に応じて非常に賢い行動を取ることがあります。40年ほど前にあるウォンバットが私と友達になって茂みを案内してくれた経験がなかったら、この話を完全否定していたでしょう。しかし誘導してくれたわけではありません、私が後をついてきているかと確認しながら待ってくれたのです。赤ちゃんウォンバットたちはママに触れようと後をついていきます。しかし母ウォンバットは犬がするような誘導はしません。」
「誘導などは必要がないのです。他の動物たちはウォンバットの巣穴の存在を知っていて、その巣穴を探す賢さはあります。」
でも巣穴をシェアなどできるのでしょうか?
ウォンバットはとても複雑な巣穴を作ります、いくつもの部屋と入口を作ることもあります。100mを超えるほどの巨大さです。巣穴は深く火災から身を守れるほど十分に換気できます。6週間の間お互いに巣穴を共有したのです、とフレンチ氏は Canberra Times に語っています。
しかしほかの動物とシェアするのでしょうか?なんとメルボルン大学の動物学の学生らがカメラを仕掛けたところ、ほかの動物たちがウォンバットの巣穴を利用している姿を捉えました。
生活環境が違うコアラとウォンバットのホームドラマを思い描く前に、巣穴が非常に大きく複雑なので動物同士出会う可能性が低く小さな動物は長居しないだろうということを指摘したほうがいいでしょう。
「ウォンバットは意地悪にもなります。」と地元の哺乳類生態の専門家で生理学者のカース・ハンダーシン氏はメルボルン大学に語っています。「もしコアラがウォンバットとであったら追い出されて写真のようにリラックスしていないでしょう。」
しかし、非常事態は違うかもしれない、とジャッキー・フレンチ氏は言います。
「災害時にはウォンバットが他のウォンバットや蛇、フクロネコ、ポッサム、バンディクート、ハリモグラ、フサオネズミカンガルーなどといった小さな動物たちと巣穴を共有するのを見たことがあります。」とコメントしました。
「ワラビーもウォンバットの巣穴に避難するでしょう、でも入口が大きいところに限ります。そしてあまり奥には行かないと思います。でも私は火災の時にウォンバットとシェアしたことはありませんから、中でどうなっているのかは何とも言えません。中から何が出てきて、何が中へ消えていったかを見ただけなのです。」
「今ここで書いた動物たちはエサ場や水場を共有しています。ウォンバットは危険があるときには巣穴を共有してくれるでしょう。でもそれは極限状態だから我慢しているのであって誘導ということはないでしょう。」つまり、動物たちがウォンバットの巣穴に避難することは可能でウォンバットも我慢するでしょうが、おそらく実際起こったとしても自ら誘導したわけではなく、動物たちが逃げてきたのでしょう。
reference:iflsceince