水中のサカサクラゲは触るとヒリヒリと痛むことがあります。そして科学者はついにその謎を突き止めました。
サカサクラゲは海底に住み、ひだのついた腕を空に向かって伸ばして毒入りの粘膜を出し、そのスライムで近くを泳ぐ者たちを『刺す』ということが新たな研究によって明らかになったのです。
このクラゲ(Cassiopea xamachana)は海底に生えたドロドロの植物のようなとても奇妙な見た目で、群れを作る傾向があるので異様な花壇が広がります。モントレーベイ水族館によると、サカサクラゲはマングローブ林やフロリダ南部のラグーン、ハワイ、インド洋、カリブ諸島などで見ることができるそうです。これらの地域に訪れたシュノーケリングをする人たちが、まるで水そのものに刺されたかのような感覚で時々皮膚にかゆみを感じることがあります。
「そしてチクチクと痛み始めます…ただのかゆみが一転して痛みがやってくるのです。」と博物館研究員で日本の東北大学海洋生物学准教授でもあるシェリル・エイムス氏が教えてくれました。
しかし、その実際の原因はまだ分かっていないのです。
Communications Biologyに2月13日に掲載された論文でエイムス氏は同僚とともに、ついにこの事件を解決させたのです。サカサクラゲは海底から刺胞と呼ばれる細胞を装備した爆弾倉庫を仕掛けるのです。その爆弾近くを泳ぐ者が触れると毒を散布し皮膚を攻撃します。サカサクラゲの好物で小さなエビの仲間であるアルテミアが爆弾にぶつかると、毒殺されてしまいます。
このような刺す水に慣れた人たちはウオジラミという名前を聞いたことがあるでしょう。サカサクラゲがひき起こす痛みのせいで他の生き物たちがしばしば濡れ衣を着せられるのです。ウオジラミは魚の粘液や皮膚組織などを食べる寄生虫です。このような刺す水のことを口語では『catchall(ガラクタ入れ)』と言うと、エイムス氏は話しています。
ほかの提案された説明はどれも精査していません。「私たちは初めほかのクラゲの触手片があるのだろうと思っていました。産卵期に離れた断片が水中に浮かんだのでしょう。」とエイムス氏は話しています。別のではまだ(顕微鏡レベルの微小な)幼生期のクラゲが水中に浮かんで人を刺しているのだろうと考えられていました。しかし、研究者たちが何度も生息地を訪れてもその架空のクラゲの赤ちゃんが大人になった姿など見たことがありません、とも話しています。
謎はまだ解けていませんが、人が刺された時は必ずと言っていいほど干潮の時で、サカサクラゲが近くで粘液の暗い雲を作り出しているということに科学者は気づきました。この変わり者のクラゲが犯人だと証明するために、このクラゲの粘液のサンプルを採取して高分解走査型電子顕微鏡で観察しました。すると、非常に小さいゼリー状の球体が液体に浮かんでおり、細胞や藻類が中に詰まっているように見えました。
「私たちは恐怖というかショックを受けました。これは何?初めての発見じゃない?と話しました。」と語っています。「私たちの中でこれがなんだかわかる人は誰もいませんでした。」
研究チームは1908年から暗礁に乗り上げた奇妙な球体の研究を見つけました。しかし当時の研究者はクラゲの寄生虫であると 間違った定義をしていたのです。この球体の分子やタンパク質を分析した結果、エイムスのチームは球体がクラゲから放出されたもので腕のスプーン型の部分から分散したのだとわかりました。
刺胞と言われる刺す細胞を細胞の外層にまとったぼこぼこした球体で、ひとたび触れるとこの細胞は表面の細長い構造物から毒を吐き、近づく無防備な者たちを刺すのです。刺胞に加えて、細胞は繊毛と言われる髪の毛のような細い糸でこの球体を覆われています。この繊毛は水中で揺れ、小さなプロペラのような役割をして球体をあらゆる方向に散らします。研究チームはこの自由に動き回る球体をこのクラゲが属するサカサクラゲ属(Cassiopea genus)から名前をとって『cassiosome』と名づけました。
「このカシオペアの中で動き回る細胞の構成要素を含む刺胞の発見は予想もしていなかった組織化を見せました。」とイスラエルにあるハイファ大学海洋生物学部長のテイマン・ロータン氏はLive Scienceにメールでコメントをしています。
「刺胞はおもにクラゲの腕に存在します。」とロータン氏はこの研究論文には参加していませんがこう話してくれてました。「しかし、このサカサクラゲは自分を覆うように刺胞を作り出し、このcassiosome爆弾を装備した粘液の層で防御するのです。」
では、次にフロリダキーズへの旅行の際に毒地雷地帯を泳ぐ時にはどのように身を守れば良いのでしょう?
「干潮時ですね、明らかに水位が低い時にクラゲに近づくとクラゲの怒りを買います。」と論文の共著者でスミソニアン国立自然博物館と、国立海洋大気庁国立システマティック研究所の動物学者、アレン・コリンズ氏はコメントしています。サカサクラゲが怒ったときや特定の時にさらに多くの刺胞を発生させるかどうかはまだ分かっていないと、コリンズ氏は加えてコメントしています。
ですから、もし遊泳中にサカサクラゲを見かけたら、遠くからそのグニャグニャの生き物を眺めるだけにして、粘液で覆われたトゲのある球体の雲が浮かぶことを避けるのがベストです。
reference:livescience