フランスの入り江で230年前に岩に刻まれた謎の碑文が何十年もの間、解読を試みる人々を悩ませてきました。しかし、この碑文を読み解くコンテストの募集が始まって1年経った今、専門家たちがとうとう秘密のメッセージを解読してみせました。
2019年5月にフランス、フィニステール県の小さな町、プルガステル゠ダウラの役場が、この20行にわたる刻字文を解釈する人を求めて公募の告知をしました。干潮時のみに辿り着くことのできる岩に刻まれたこの文には、文字と記号(ハートの上に十字架が描かれたものや船など)とともに1786と1787という二つの西暦年が記されています。
正しく解読した可能性のある61の応募文が世界中から送られてきたとイスラエルの英字日刊紙、エルサレム・ポストが報じています。その中から、やや異なる解釈であるものの似たような結論に達した二つの解読文を町役場の職員たちが優勝作として選びました。エルサレム・ポストによると、この碑文は「フランス革命の少し前に近くの沖で死んだ、『セルジュ』という名前の可能性のある男性」の記念碑だと結論づけられたということです。
この岩に刻まれた不可解な文の調査が始まったのは1979年のことでした。しかし、碑文全体の言語は研究者らを困惑させるものだったとフランスの国際ラジオ局、ラジオ・フランス・アンテルナショナル(RFI)が2019年12月のオンライン記事で伝えています。
文章の大半は18世紀のブルトン語(中世にフランス西部で話されていたケルト語派に属する言語)に類似していますが、スカンジナビアの言語で使われるØという文字やウェールズ語の可能性のある単語も組み込まれているとBBCのオンライン記事では説明しています。さらに、逆さになっている文字や逆向きの文字が多くあることから、読み書きをあまり知らない人物が刻んだのかもしれないと推測されます。
とは言え、完全に解読されているブルトン語の一文が目を引きます。それは「これらの言葉を通して、あなた方は真実を知るだろう」と告げているとブルトン語の専門家であるフランスワ゠ポール・キャステル氏が述べていることをRFIの記事が伝えています。
「碑文の一番上に刻まれている文章を翻訳するとそうなります」とキャステル氏は言っています。「とても謎めいていると思いませんか」
優勝作の一つは、ケルト研究者であり英語学の教授でもあるノエル・レネ・トディック氏が書いたものです。エルサレム・ポストによると、トディック氏の訳文の一部はこのようなものです。「セルジュは舟をこぐ技術がなく、風によって舟が転覆したとき死んだ」
もう一方の優勝作は、ジャーナリストのロジェ・ファリゴ氏と漫画家でコミックス原作家のアラン・ロベ氏が共作したものです。フランス通信社(AFP)によると、こちらの訳文は、誰かに友人の死の責任を負わせるという、より不吉な内容となっています。その一部をエルサレム・ポストの記事から紹介します。「彼は勇気とジョワ・ド・ヴィーヴル(生きる喜び)の化身だった。その島のどこかで彼は殴られて死んだ」
解読の尽力に対する賞金2,000ユーロ(日本円にして24万円)を二組は分け合ったとAFPが伝えています。
reference:livescience