太陽の最外層の大気であるコロナを肉眼で見ることのできるのは皆既日食の間だけです。そのため、この何十年間というもの、コロナを研究しようとする天文学者は創意工夫に励まなくてはなりませんでした。
そのような創意あふれる最新の試みは、わずか10分間飛行するためにロケットで宇宙に運ばれた準軌道望遠鏡による観測です。その短い飛行時間に史上最も高い解像度のコロナ画像を撮影することに成功しました。この観測結果の報告は『アストロフィジカル・ジャーナル』で読むことができます。
高解像度コロナ撮像装置(Hi-C)と呼ばれるこの望遠鏡は、最小で70kmほどの細部までとらえることのできる性能を備えています。コロナに存在するプラズマの磁力化したストランド(撚れた線)に研究チームは焦点を当てました。典型的なストランドの幅は510kmくらいですが、Hi-C望遠鏡は幅が200kmほどの「細い」ストランドまでとらえました。
「これまで太陽天文学者は最も近い恒星、太陽を『標準画質』で効率的に観測してきましたが、Hi-C望遠鏡によって得られた格段に質の高いデータのおかげで今までにない『超高解像度』で太陽の一角を調査することができるのです」とHi-Cチームの組織指導者であり、英国セントラル・ランカシャー大学の教授でもあるロバート・ウォルシュ氏は同大学が発表した声明で述べています。
この観測はHi-C望遠鏡の3度めの打ち上げで行われたものですが、将来、さらなる打ち上げがいくつか計画されています。研究チームは今回得たデータをNASAのパーカー・ソーラー・プローブおよび欧州宇宙機関(ESA)のソーラー・オービター(SolO)による観測データに重ね合わせて研究することにしています。探査機パーカー・ソーラー・プローブは既に太陽の調査を進めており、SolO は今年2月に打ち上げられた太陽観測衛星です。
「これらの最新のHi-C画像によって太陽の大気について飛躍的に理解が深まります。プローブやSolOなどの進行中の宇宙ミッションとともに、将来、一団を組むことになる、これらの宇宙設置型機器が私たちにまったく新たな観点で太陽の活動的な外層を見せてくれるでしょう」とNASAのマーシャル宇宙飛行センターのHi-C主任研究員、エイミ・ワインバーガー博士は説明しています。
依然として、科学者たちはコロナがどのようにして、これほどまで高温になったのか、完全には理解できていません。太陽の表面が5,500℃ほどであることを考えるとコロナの温度が数百万度であることは不可解なのです。Hi-Cを初めとする太陽探査ミッションが、この謎を決定的に解明するのに十分なデータを収集することが望まれています。
reference:iflscience