イギリスに住む主婦、マリーナ・チャップマンさんはふたりの娘を寝かしつけるときに自分がジャングルで育った話をよく語り聞かせていたました。と言っても、それはおとぎ話ではなく、本当にあった体験談でした。
報道によると、当時、南米のコロンビアに住んでいたマリーナさんは5歳のときに誘拐され、死んだと思った犯人にジャングルに置き去りにされたのです。オマキザルの一族と行動を共にするようになり、「サルたちが食べたり飲んだりするものを私も口にし、社会的な活動や言葉をまねる」うちに一族の一員として受け入れられて5年間を過ごしました。
マリーナさんは自著の『失われた名前 サルとともに生きた少女の真実の物語』に自らの驚異的な体験を綴っていますが、野生児として育った子どもの驚くべき話はこのほかにもあります。この記事では、マリーナさんを初めとする動物に育てられた6人の子どもたちの報告例を紹介します。
マリーナ・チャップマンさんは、5歳ごろにおそらく身代金目当てに誘拐され、コロンビアのジャングルに置き去りにされたと言っています。そこでオマキザルの群れに迎え入れられて、およそ5年間、ジャングルの中で暮らしました。
オマキザルは幼児を群れに受け入れることで知られていると専門家は指摘しています。サルたちは幼いマリーナさんが生きていけるように鳥やウサギを素手で捕まえる方法を教えてくれました。マリーナさんは猟師たちに発見されて人の社会に戻りますが、売春宿に売られ、後にそこから逃げ出したということです。
2012年の6月にロシアで、母親によってヤギといっしょに部屋に閉じ込められていた幼児がソーシャル・ワーカーに発見されました。報道によると、その男の子はヤギと遊んだり眠ったりしていましたが、栄養状態が悪く、体重が同年齢の子どもの標準体重の3分の2しかなかったということです。
男の子が保護された際に母親は姿を消しました。それ以来、医師たちが人の生活に順応させようと試みていますが、容易ではないようです。「男の子は折り畳み式ベッドで寝るのを嫌がって、ベッドの下に潜り込んでそこで寝ようとしました。それに大人を大変怖がっていました」と医師のひとりは述べています。
2009年にロシアのシベリアの町で、通報を受けた福祉職員たちがアパートを訪ね、暖房の効いていない部屋にいた5歳の女の子、ナターシャを見つけました。表向きにはナターシャは父親や他の親族と暮らしていることになっていましたが、アパートの一室で多数の犬や猫の中に置かれ、その内の1匹であるかのような扱いを受けていたのです。
ナターシャは同居仲間の犬や猫と同じように床に置かれたボウルの中の食べ物を舌を使って食べ、人の言葉は一言も知らず、コミュニケーション手段としては「シッシッ」と息を鳴らすことか、吠えるような声を出すことしかできませんでした。当局がナターシャを保護した際に父親は行方をくらまし、それ以来、ナターシャは児童養護施設で生活しています。
2008年のアルゼンチンでのこと。置き去りにされ、8頭の野良猫に世話をされていた1歳の男の子を警察が発見しました。
報道によると、冬の夜の間、猫たちは男の子に覆いかぶさって寒さから守り、肌の上で固まった泥をなめて取ろうとさえしていたということです。また、猫の子守り部隊が持って来たと思われる残飯を男の子が食べているのも目撃されたことがありました。
2001年にチリの洞窟で犬の群れと暮らしていた少年が見つかりました。発見時に10歳になっていた少年は少なくとも2年は犬たちとともにいたと見られています。厳しく不安定な幼児期を過ごしてきた少年は両親に育児放棄されましたが、養護施設からも逃げ出しました。
ひとりきりになったとき、身を寄せたのが犬の群れでした。犬たちは残飯をあさるのを助けてくれるばかりでなく、守ってくれようとさえしてくれたのです。警察の広報担当者は少年が雌犬から乳を吸っていたのかもしれないと言っています。「犬たちは少年にとって家族のようなものだったのでしょう」
野生動物に育てられた子どもの事例の内、詳細な記録があるもののひとつがカマラとアマラのケースです。ふたりのことは「狼に育てられた子どもたち」として知られています。1920年にインドのゴダムリ村のジャングルで発見された3歳と約8歳の少女ふたりは雌オオカミの率いる群れとともに暮らしていました。
少女たちが血縁関係にあったのかは明らかではありませんが、発見者であるJ. A. L. シング牧師は自らが運営する孤児院にふたりを連れ帰り、人間的な環境に慣れさせようとしました。数年の内に進歩は見られましたが、ふたりとも病によって亡くなったため、シング牧師は「この子たちはジャングルにそのまま置いておくことが正しかったのではないか」と思ったということです。
reference:the week