まったく『見えない』動物になること、これがカモフラージュゲームの最終目的となります。光は水と体の組織で大体同じスピードで進む(光の屈折率が似ている)ため多くの水生動物はこれを成し遂げています。つまり、体は全体的に光を反射しにくいのです。陸上では空気と体の組織では屈折率がまったく違うので、動物の姿が見えやすくなるためこの偉業を成し遂げるのは至難の業です。
透明性の高い陸上動物の1つにガラスガエルがあります。中南米に見られ、ぶどう程のサイズのガラスガエルは体の中が見える『透けるおなか』を持つことで有名です。しかし、ガラスガエルはその名前に反して完全な透明ではなく、薄い緑の色素を持っているので上から見るとどちらかというと半透明に近いです。
ですから、背景を眺められる窓のように完全に透明なものではなく、半透明のガラスガエルはうっすらと緑がかっているため背景を透かさずにブロックするのです。国際研究チームによる新たな研究では、ガラスガエルが半透明の体でも効果的にカモフラージュできているのかを調査しました。
エクアドルのエメラルドガラスガエル(Espadarana prosoblepon)と、フランス領ギアナのサンタシシリアガラスガエル(Teratohyla midas)の2種類のガラスガエルの写真50枚以上に『捕食者ビジョン』を適用することで、ガラスガエルは周りの葉っぱに合わせて緑色の皮膚の明度を変えていると結論づけました。これは、背景に合わせて異なる色素を作り出して色を変える動物のメカニズムとは異なります。
「このカエルは常に緑色をしていますが、背景によって明るくなったり暗くなったりします。」と PNASに掲載された研究論文の第一著者でイギリスのブリストル大学の博士課程の学生時代から研究をし、現在はカナダのマクマスター大学を拠点に置いているジェームズ・バーネット博士は声明で述べています。「この明度の変化によって周りの景色、主に葉っぱの色に合わせているのです。」
しかし、カエルの秘策はこれだけではありません。
「カエルの足は体よりも透明度が高いということがわかりました。カエルが葉っぱの上で足を体の脇に寄せて休んでいる時、葉っぱの色からカエルの色へとグラデーションがかかることで、カエルの輪郭がはっきりと出ないのです。」とバーネット氏は説明しています。「これは『勾配拡散』という新しいカモフラージュの形態です。」
これが有効なカモフラージュかどうかテストをするため、バーネット氏と同僚の研究員たちはいくつかの試験をしました。まずは、人間が葉っぱに紛れた不透明、もしくは半透明のカエルを見つけるまでのタイムを測るコンピューターベースの方法です。2つめはエクアドルで行った実験で、研究チームがゼラチンで作ったガラスガエルのモデルを野生の捕食動物が食べるまでにかかった時間を測るものです。どちらの実験でもガラスガエルは不透明なカエルに比べて見つけられる(食べられる)までにかかる時間が長かったのです。
研究チームの実験結果は、ガラスガエルの『見えない』というユニークなアプローチによって実にうまく隠れることが出来ていることを示唆しています。
「私たちの研究は一般でも科学コミュニティでも憶測を呼ぶ話題であった疑問を扱っています。」と論文の共著者でブリストル大学の視覚専門家であるニック・スコット・サミュエル教授は声明で述べています。「私たちはガラスのような見た目のカエルは、実際にカモフラージュの形態だという証拠を掴んだのです」
reference:iflscience