オーストラリアの物理学者エルヴィン・シュレディンガーによる、箱の中のネコの思考実験は量子レベルで粒子の予測が不可能であるという量子力学の特徴を定義づける一つの例です。
そのため量子システムを扱うことは非常に難しいのですが、もし量子が予測可能だったらどうでしょう?とある物理学者チームはそれが可能だと信じています。
去年発表された研究論文では量子跳躍と呼ばれるものを予測する能力を証明し、そのプロセスを逆行すらさせたのです。
研究者チームは、シュレディンガーのネコは『救われた』と話したのです。
まずは、そもそもシュレディンガーのネコとはなんなのかについてお話しましょう。物理学者はこのようなシナリオを描いています。まず、箱の中に猫がはいっていて蓋が閉じられています。
この箱の中には放射性崩壊の元、ガイガーカウンター、フラスコに密封された毒があります。ガイガーカウンターが単一原子の放射性崩壊を検知すると毒が入ったフラスコは粉々になりネコは死んでしまいます。
箱の中身は見ることができませんのでネコが生きているのか死んでいるのかは知ることができません。つまり箱を開けてみるまではどちらの可能性もあるわけです。
箱を開けた瞬間に死んでいるか生きているかが決定し、生死の可能性はひとつに絞られます。
この架空の話の設定は量子の重ね合わせと呼ばれており、観察するその瞬間までは粒子(原子やエレクトロン、光子など)は同時に多重エネルギーの状態で存在することができます。
一旦観察されると突然ランダムにエネルギーの状態が遷移することを量子跳躍と言います。
その跳躍は故意的に結果を操作さえすれば物理学上予測可能なのです。
イエール大学率いる研究チームは量子コンピューターの情報の基本単位として使用される量子ビットという人工原子を使うことでこれを実現させました。
量子ビットを測定する時は常に量子跳躍が実行されます。これは長期的に見れば予測不可能で量子コンピューティングにおいては問題を引き起こすことがあるのです。
「跳躍が差し迫った時に事前に警告信号の受信が可能かどうか知りたかったのです。」とイエール大学の物理学者であるズラスコ・ミネフ氏は語っています。
研究チームは超伝子量子ビットを間接的に観測する実験を設計し、アルミニウム製の密封された立方体に量子ビットを照射するために3つのマイクロ波発振器を使いました。
このマイクロ波の放射線はエネルギーの状態間の量子ビットを切り替え、別のマイクロ波放射線が箱の中を監視します。
量子ビットが基底状態にあるとき、マイクロ波光線は光子を発生させます。光子が突然消えるということは量子ビットが量子跳躍を励起状態にさせようとしていることを意味します。
研究によると、この跳躍は遷移ほどではありませんのでスイッチをパチンと切り替えをするというよりはレバーを引いて徐々に切り替えるという感じでしょうか。
したがって、放射線の時間パルスは検知されると量子跳躍を逆に基底状態に戻すことができるので、シュレディンガーのネコに置き換えて言えば、死ぬ(興奮状態)のを妨げ生き返らせる(基底状態)ことができます。
それでも長期間の予測は不可能なのです。例えば、研究者たちはいつ量子跳躍がいつ起こるか正確に予測することはできません、5分後かもしれませんし5時間後かもしれないのです。
しかし一度跳躍が始まると、常に同じように起こります。研究チームは680万回もの跳躍を観察してきたが一貫したパターンだったのです。
「原子の量子跳躍は火山の噴火に似たところがあります。」とミネフ氏は話します。「長期的な予測はまったく不可能なのです。
「ですが、正しく監視することによって災害が差し迫っているという警告は事前に検知して発生する前に対処することができます。」
この研究はNatureに掲載されたものです。
reference:sciencealert