暗黒郷のフィクションによってあらゆる種類の黙示録が示されてきました。のそのそと歩くゾンビ、エイリアンの侵略、そしてもちろん人の命を奪う疫病もそのひとつです。しかし、最も貴重な資源であるトイレットペーパーの悲劇的な枯渇はどんなひねくれ者にも予測はできませんでした。
なぜ人々は歯ブラシやくつ下は買い占めなかったのでしょう?まだ答えの全容は明らかになってはいませんが研究者たちが調べ、トイレットペーパー不足は誰のせいなのか特定できたかもしれないというのです。
性格診断検査によってロックダウン中に買い溜め下人に共通する特性が浮き彫りになったのです。
トイレットペーパーを一番買い占めたのは、感情的かつ良心的な人で、COVID-19をより怖がっていた人あることがわかったのです。この結果は全く驚きではありませんが、検討するには興味深いパーソナリティプロファイルと言えます。
この結果が示したのは、たくさんの商品に飛びつくのはほかの人が購入する機会を奪うわがままな行動であるというよりは、友人や家族を心配しての行動であったということです。前者ではなく後者の理由からの行動だったのなら誰が彼らを責められるというのでしょうか?
未知の感染症のパンデミックや死者の増加を目の当たりにして、人々は最悪の事態に備えるためにベストを尽くしました。人によっては重要課題となるのが消毒剤や薬ではなく必需品の確保であるとして、腐りにくい食品や水を備蓄しました。
パスタやアルコール除菌シートの備蓄の方が理にかなってはいますが、必需品リストのトップにトイレットペーパーが載ることなど想像もつかなかったこともあり、ヨーロッパでは700%の売り上げ増加を報告した製造会社もありました。
(世界が正気を失ったのは今回が初めてではありません。50年ほど前にも同様の消費ラッシュがあり、アメリカ中のスーパーのトイレットペーパーの在庫がなくなったのです。1973年9月にアメリカ中のニュースの見出しが日本のトイレットペーパー不足を強調する過剰な報道によって人々の不安を煽ったのです。)
パンデミックの中での買い占め行動を説明するのはもう少し複雑で、実際に危機的な状況にあったのです。多くの人が身勝手な『パニック購入』をしていたと思われたこの行動は、ちぐはぐなファッションのように見えて計画的なものだったと合理的に言えるかもしれません。
「しかし、脅威を感じた結果としての買いだめを身勝手だと考える人もいましたが、これは必ずしも利他的な性質が欠如していることを反映しているわけではないと話しておく必要があります。」と研究チームは研究報告に記しています。
「むしろ謙虚でモラルのある人たちこそパンデミックに怯えている限りトイレットペーパーを備蓄するかもしれないのです。」
こういった大量購入に隠された本当の心理をより理解するために、ミュンスター大学の心理学者者と、ドイツのマックス・プランク進化人類学研究所とスイスのザンクトガレン大学の人類学者は、政府が感染率の上昇に応じてロックダウンを実施した頃 HEXACO personalityというオンライン調査を実施しました。
研究チームは35ヶ国から合計で1,000人ほどの大人から回答を集めました。分析した結果、HEXACOでどんな回答をした人がトイレットペーパーを買うために行列に並んだのかがわかってきました。
その結果3つの重要な発見がありました。まず、COVID-19を脅威であると感じた人はより多くのティッシュペーパーを買う傾向が強かったのです。
さらに、感情的な人、つまりより不安感を持った人で他人に共感や思い入れを抱きやすい人も買いだめをする傾向にありました。
そして、良心的な人、組織内で真面目な人もトイレットペーパーの大量購入と相関関係にありました。
このような性格の特性は消費者行動パターンの変動性の10%ほどしかカバーしていません。つまりほかの影響があったことを探らなくてはいけません。
この研究では年配の方もトイレットペーパーを買い占める傾向がわずかに高かったことも示していて、さらにアメリカ人はヨーロッパの人たちに比べて買い物の頻度が低い代わりに大量購入することもわかりました。
今のところは2020年のトイレットペーパーの爆買いは落ち着き、消毒剤の需要が再度高まっています。
まだ今年は半分しか過ぎていません。8月にエイリアンが侵略してくるかもしれないし、10月に死者が急増するかもしれません。最後の貴重な2枚重ねの四角いティッシュ1枚を分け合って上手く対処できたらいいですね。
この研究は PLOS Oneに掲載されています
reference:sciencealert