犯罪心理学は近年、連続殺人犯の心理の解明について大きな飛躍を見せましたが、人食い殺人について研究しようという研究者はほとんどいません。その恐ろしい空白を埋めようと、アメリカとドイツの神経科学者からなる研究チームは殺人方法や人食い殺人鬼が狙いやすい犠牲者の特徴にカテゴライズした研究論文を発表しました。
彼らの研究結果はFrontiers in Psychologyの中で説明がなされ、1900年以降に有罪判決を受けた121人の人食い殺人者について確認するため、論文著者はインターネットや科学文献を徹底的に調べました。この人食い殺人鬼たちの犠牲者は631人にものぼり、その殺人手口は従来の殺人とは全く違うものだったのです。
「私たちは人食い殺人の手口や犯罪者、そして犠牲者には特徴的なパターンがあると結論づけました。」と研究者たちは記しています。例えば、人食い殺人鬼は通常よりも年齢層が高く、逆に犠牲者は通常の殺人の場合よりも年齢層が低い傾向があることがわかりました。
人食い殺人鬼は拳銃による殺人よりも刺す、絞める、たたくといった性的で自分の手で行う殺人が圧倒的に多いのです。これは多くの人食い殺人鬼は犯罪を起こすことで至福の喜びを感じ、人間の肉を牛やブタ、ダチョウ、馬などの肉と偽って何も知らない客に売ることでスリルを味わっているようである、という事実に関係していると思われます。
しかし、最も論文著者の興味を引いたのは、通常の殺人は知人を狙うことがよくあるのに対し、人食いたちは他人を獲物にすることがはるかに多いのです。研究者たちの統計的分析によると、従来の殺人では血縁者を狙う割合がかなり高いのに対し、人食い殺人では家族を殺した割合はたったの2.5%なのです。
さらに、親族を食べたという少数派の人食いは重い精神病を患っていたことがわかりました。精神衛生スコアの異常な高さを見せた人が、他人を食べた人殺人鬼では22%だったのに対し、家族を食べたという人では3分の2ほどにのぼりました。
どんな人食いであれ、重大な精神病を患っているように見えますが、論文著者はこのタイプの犯罪者のほとんどは親族を食すことは避けるという自然論理に従っているが、気が狂った者だけがこの黄金率を破っていると推測しています。
この仮説はさらに磨きをかける必要があることは認めつつも、研究者たちは親族を食べることは進化において有利には働かない、スペードフットヒキガエルのオタマジャクシのような特定の共食いをする種が決して血縁関係の仲間を共食いしないのはこのためだと考えています。
reference:iflscience