私たちの住む太陽系の属する銀河系。この天の川銀河は直径約10万光年というとてつもない大きさであり、2000億個もの恒星が存在していると言います。さらには、美しい星雲やブラックホールなどといった様々な天体によって構成されています。
そして、多様な天体がうごめく天の川銀河の中心部には化け物的なブラックホー ル「いて座A*(いてざエースター)」が君臨していると考えられているので す。
このいて座A*とは一体何者なのでしょうか?そして、いかにして誕生したの でしょうか?
今回は天の川銀河の中心に存在すると考えられている「いて座A*」についてご紹 介したいと思います。
ブラックホールは、密度が極めて高く、強大な重力を持つ天体。太陽の30倍以上の大質量を持つ星が超新星爆発を起こしたのちに誕生します。ブラックホールの引力はあまりに大きく、事象の地平線を超えると、光さえも抜け出すことができません。
ブラックホールは3種類に分類されています。最も小さい恒星質量ブラックホール、最小と最大の間の中間質量ブラックホー ル、そして最も大きい超大質量ブラックホール。
この超大質量ブラックホールは典型的な恒星質量ブラックホールの100万倍〜10億倍の質量を持ち、巨大銀河の中心に位置しています。私たちの銀河の中心に潜んでいる超大質量ブラックホールが今回のテーマであるいて座A*であり、太陽の約400万倍の質量があると推測されています。
見えない物体の近くをすべての恒星が速く進むのが観測されたことにより、天の川銀河の中心に潜んでいる何者かが莫大な力を持っていることが明らかとなったのです。そしてこれらの情報から、天の川銀河の中心に超大質量ブラックホールがあるという仮説が立てられました。
では、人類はどのようにいて座A*を観測しているのでしょうか?
地球から銀河系の中心、いわゆるいて座A*が存在すると考えられている領域を直接観測しようとしてもガスと塵の雲で覆われているため、非常に困難な挑戦となります。
しかし、電波のように他の波長の光を使うと観測することができ、ミーアキャッ トという最新の電波望遠鏡施設により、電波画像が2018年に撮影されました。これにより、私たちの銀河の超大質量ブラックホールの恐ろしくも壮大な姿が明 らかとなったのです。
宇宙において、今までに発見されたもののなかで、これほどの密度と重力を持つ物体は超大質量ブラックホールのみ。超大質量ブラックホールの形成過程については諸説あります。
一つの仮説としては、小さなブラックホールが大量のガスと塵を徐々に吸収しながら、他のブラックホールと合体して大きくなり、徐々に現在の巨大な化け物になったというものがあります。とは言え、これほど大きくなる理由は現在、研究の途中であり、一致した見解はまだありません。
ブラックホールの存在自体、地球人にとっては驚くべきものであり、天の川銀河 の中心に超大質量ブラックホールが存在するなど絵空事のように感じる人もいる かもしれません。
しかし、広い宇宙を見渡すと、いて座A*はそれほど飛び抜けた大きさではないことがわかっています。なんと他の銀河ではいて座A*の約1000倍、太陽の約400億倍もの質量を持つ超巨大ブラックホールが発見されているのです。
倒しても倒しても新たな強敵が現れる漫画のように、この広大な宇宙空間にはさらなる化け物が潜んでいるのです。