現代の技術で人類が観測することのできる宇宙の大きさは138億光年。途方もない大きさですが、宇宙は現在進行形でまだまだ広がり続けています。この広大な宇宙空間では、超新星爆発のような大規模なものや、原子爆弾のような小規模なものまで多種多様な爆発が発生しています。
そんな宇宙で起こる様々な爆発現象の中、最大にして最強とされるものが今から紹介するガンマ線バーストです。ガンマ線バーストのエネルギー量はどれほどのものなのでしょうか?地球への影響はあるのでしょうか?
今回は宇宙最強の破壊光線「ガンマ線バースト」について、ご紹介したいと思います。
ガンマ線バーストは、現在「宇宙で最も規模の大きな爆発」とされている現象です。そのエネルギー量は驚くべきもので、太陽が一生をかけて放出する莫大なエネルギーと同程度、もしくはそれを遥かに上回るような量のエネルギーがわずか数秒〜数百秒という短時間で閃光のように放出されるのです。
「爆発」と表現しましたが、ガンマ線バーストは光線のように、ある程度の指向性を持ったレーザーのような状態で放たれると考えられています。例えると、それはリアル破壊光線。近くに位置するあらゆる星々がその直撃を恐れることでしょう。
冷戦時代にアメリカがソ連の核実験による放射線を感知しようと人工衛星で放射線の偵察を行っている際に、宇宙から飛来する謎の放射線を感知したことでリアル破壊光線、ガンマ線バーストの存在が明らかとなりました。
では、この凄まじい威力を持つ破壊光線は、どのようにして発生するのでしょうか。ガンマ線バーストは、その継続時間から大別してロング・ガンマ線バーストとショート・ガンマ線バーストの2つの種類に分けられます。
ロング・ガンマ線バーストの発生源は太陽質量の40倍を超えるような重い星の一生の最後に起きる超新星爆発。そして、ショート・ガンマ線バーストの場合は中性子星の合体やマグネターと呼ばれる強い磁場を持った星における爆発現象ではないかと考えられています。とはいえ、これらの巨大なエネルギーの発生メカニズムについては未だ多くが謎に包まれています。
さて、「このとんでもない破壊光線が地球を襲ったら」と考えると、少しゾッとするようなものを感じることでしょう。
しかし安心してください。銀河内でガンマ線バーストが発生する確率は1000年に1度程度で、さらに発生したバーストが地球に向かってくる必要があります。また、天の川銀河の外でガンマ線バーストが起こったとしても、そのガンマ線は地球の大気によって遮断される程度の強さであるため、地球への危険性はほとんどないことでしょう。
ですが、もし万が一ガンマ線バーストが地球に当たったらどうなるのか、気になりますよね?もちろんその期待にお応えします。
まず、バーストが地球から十分に近い場所で発生し、それがかすったような場合はどうでしょうか。
まず考えられるのは、電子機器への深刻なダメージです。生活のありとあらゆる場所に電子機器が使われている現代社会では、「文明が滅びる」と言っても過言ではないでしょう。テレビやスマートフォンは使用不可能に、世界中で航空機が墜落することでしょう。
「電子機器や文明の利器が使えなくても、身ひとつで生き抜いてやる!」と考えた方……非常に残念なお知らせです。わずか10秒、ガンマ線が地球に降り注いだだけで、地球のオゾン層の約半分が失われると言います。消し飛ばされたオゾン層が回復するには最低でも5年を要し、その間に太陽からの強力な紫外線が地球に生息する生命の大半を滅ぼしてしまいます。
では、バーストが地球からごく近い場所で発生し、それが直撃した場合。
あまりのエネルギーに、地球は消し飛ぶか、それに近い無残な姿となるでしょう。もちろん生命の絶滅は言うまでもなく…。また、約5億年前のオルドビス紀の終盤、地球上で繁栄していた海洋生物の70%が大量絶滅した原因はこのガンマ線バーストではないかという仮説が存在します。少し前に地球への危険性はないと説明しましたが、過去に影響を受けている可能性があるのです。
ただ、ガンマ線バーストは光速でやってくるため、バーストの存在に気づいた時にはあなたはすでに木っ端微塵となっています。