宿主を破裂させて胞子をぶっ放す、寄生菌の恐るべき戦略

ハエを宿主としハエカビと呼ばれる菌類は宿主の体を内部から食いあさり、ハエが死ぬとその身体を胞子を拡散させる射撃法として利用するのだ。

NobbiP/Wikimedia Commons/CC BY-SA 3.0

イエバエに感染する寄生菌は、その小さな白い胞子を遠くまで拡散するが、そのためには恐るべき方法を用いる。

宿主であるハエを高いところに移動させると、隠れていた菌がハエが胞子をばらまくための水砲へと変え、自然界最速の液体ジェット砲を周囲に吹きかけるのだ。

ハエカビとして知られているこの病原性真菌の学名は「Entomophthora muscae」で「ハエを殺すもの」という意味を持ち、その生態はまさにその名の通りなのだ。

まず菌は宿主の脳に感染して操作する。次に、菌が内蔵や器官、体脂肪を消化してしまう前に、ハエにできるだけ高いところに登らせることを促す。

そして体の内部から食い尽くしハエが死んだ後、ここで初めてハエの体に亀裂が入り始める。そしてハエの腹部から分生子柄として知られる真菌構造の発射砲が出てくるのだ。

これらの突出器官は大量のミクロンサイズの糸のようなもので、水鉄砲のように機能すると考えられている。ひとつひとつが液体で加圧された水砲であり、外に向かって放出する準備がされている。

Ruiter et al., Journal of the Royal Society Interface, 2019

このようにとてつもなく高速のジェット砲は、いくつかのタイプの菌類に見られ、何世紀にもわたって科学者たちを魅了してきた一方、その実際の力学的見地は見過ごされてきたという。

実際、ハエカビの噴出スピードは最近やっと測定されたばかりで、秒速10メートルという驚異的なスピードだった。これは時速なら約36キロメートルになる。

研究者たちは、ハイスピードカメラと自作の合成砲を使用して、この噴出の背後にあるいくつかの主なメカニズムに着目することができたとのこと。

設計した合成砲は、小さな樽に液体を満たし発射体で塞いだものです。発射体同様、チューブの形状や厚さ、弾力性を操作することで、発射と加圧液体が天然界の菌においてどう機能するかを分析することができたそう。

調査の結果により、菌の胞子がどのように新しい宿主まで到達できるかが突き止められた。結局、胞子は絶対的な最大発射距離に最適なサイズだったのだ。

小さな胞子をほんの数センチ拡散するのに、実際にはそれほど時間はかからないだろうが、そうするためには非常に速い発射速度が必要になる。さもないとこの微小な発射体は空気抵抗のため風に乗れなかったり新しい宿主を見つけられなかったりしてしまうのだ。

「小さな発射体ほど噴出速度が速いものの、それらはまた、より大きな空気抵抗を受けます。胞子を形成するハエの周りの休眠層(数ミリメートル)を通過可能な胞子の最小サイズは10μm以上であることがわかりました。」そう論文著者が述べる。

これは、胞子自体は、通常一緒に噴出される液体に比べ非常に小さいことを意味する。

「これは天然のハエカビ分生子のサイズ(約27 μm)が境界層を通過するのに十分な大きさであるが、気流に乗るのには十分な小ささ(40 μm未満)であることを裏付けるものです。」そう著者は説明する。

それが一旦新しい宿主に付着すると、分生子柄がまったく同じ方法で別の分生子を強制放出して、これが最終的に新しい宿主に感染します。この二段階カスケード反応によりハエカビの散布が大幅に改善されたようだと執筆者は結論を下していうのだ。

reference: sciencealert