ブタとサルの細胞を併せ持つキメラをつくり出すことに初成功

中国で最近生まれた2匹の子ブタは見た目は普通のブタですが、体内では部分的に(非常に小さい部分でありながらも)サルからできています。

英・科学週刊誌『New Scienntist』の記事によると、研究者チームがサルの幹細胞をブタの受精卵に注入し、それを代理母役のブタに移植することによって、ブタと霊長類の両方の遺伝子を持つ生きものをつくり出したということです。

生まれた子ブタたちの内、2匹がキメラという異種間動物に発達していました。つまり、明確に種の異なる2匹の個体(このケースではブタとサル)のDNAを併せ持っていたということです。

「これはブタとサルの間のキメラが正常に満期で生まれたことを初めて報告するものです」と、論文の筆頭著者であるハイ・タン氏はNew Scientistの取材に応えて語っています。

同氏は北京にある研究所、幹細胞与生殖生物学国家重点実験室でこの研究を主導しています。同氏の研究チームは、最終的には移植用にヒトの内臓を動物の体内で育成することを目指していると言います。

ヒトと動物間のキメラをつくることには多くの「倫理的な問題」があるため、今のところ、同研究チームはサルの細胞で実験を続ける計画だと研究報告の中で述べています。この論文は化学・生体臨床医学誌『Protein & Cell』11月28日号で発表されました。

ブタと霊長類の間のキメラをつくるためにハイ氏と共同研究者たちは、まず、カニクイザル(学名Macaca fascicularis)から採取した細胞を培養皿の中で育てました。

次に蛍光タンパク質をつくる指示を組み込むことによって細胞内のDNAを変化させました。これによって細胞が明るい緑色に光るようになります。

これらの発光細胞は同様に明るく光る胚性幹細胞を発生させ、研究チームは準備しておいたブタの受精卵にこの胚性幹細胞を注入しました。受精卵がブタの胎児に成長していく間、研究者たちは光る箇所を見つけることによってサルの細胞を追跡することができました。

合計4,000に及ぶ胚にサルの細胞を注入し、代理母役のブタたちに移植しました。この処置の結果、10匹の子ブタが生まれましたが、その内の2匹にしかブタとサルの両方の細胞がありませんでした。

緑色の蛍光色に光るところを探して、この2匹をスキャニングしたところ、心臓、肝臓、脾臓、肺などの内臓類と皮膚のいたるところにサルの細胞が散在していることがわかりました。

各内臓には、10,000個のブタ細胞に対して1個〜10個という割合でサル細胞がありました。言い換えると、この異種間キメラたちは99パーセント以上ブタだったということです。

ブタ細胞に対するサル細胞の比率は低いものでしたが、それでも、ヒト・動物間キメラの中で育ったヒト細胞の最大数を上回っていました。

2017年につくられたヒト・ブタ間キメラには、ブタ細胞10万個に対してヒト細胞はわずか1個しかありませんでした。New Scientistによると、倫理的な理由から、異種間の受精卵を生育させることのできるのは1ヶ月に制限されているとのことです。

ヒト細胞がキメラの脳の中で育ち、その生きものが人間のような意識を獲得するかもしれないという懸念も理由に含まれています。

スペインのエル・パイス紙に7月に掲載された記事によると、そのような良心の呵責をよそに、同じ研究チームが今年初めにヒト・サル間のキメラをつくり出す実験に取り掛かったということです。

物議を醸しているこの実験の結果はまだ報告されていませんが、ヒトとヒト以外の霊長類の遺伝子が混ざった胚を数週間以上、発育させることは一切禁じられていると同紙は伝えています。

ハイ氏らの研究チームはヒト・サル間キメラに関する倫理的な問題を避けてきたのかもしれませんが、同チームが異種間の子ブタをつくったことを評価していない専門家もいます。

カリフォルニア大学デイヴィス校の幹細胞生物学者ポール・ノエフラー氏はNew Scientistの取材に応えて、サルの細胞がブタの細胞に比べて著しく少ないのは「かなり残念」なことに思えると語っています。

また、2匹のキメラの子ブタと他の8匹の子ブタがすべて、生後すぐに死亡したことにもノエフラー氏は懸念を示しています。

子ブタたちが死んだ理由は不確かなままであるとハイ氏はNew Scientistの記事中で述べていますが、子ブタたちの死はサルのDNAの注入ではなく人工授精の処置に関連しているのではないかと推測しているようです。

動物繁殖学の学術誌『Theriogenology』に2019年に掲載された研究報告によると、ブタの体外受精は成功しにくいということが複数の研究でも明らかになっているということです。

近い将来にハイ氏らの研究チームは、今後つくるキメラの体内においてブタの細胞に対するサルの細胞の割合を増やすことを目指しており、最終的にはブタの体内にサルのすべての内臓を生育させたいと同氏はNew Scientistで語っています。

研究チームは、今回のブタの研究は「大型動物の体内でヒトの内臓を復元するという究極の目標」を達成するための「道を開く」ものになるかもしれないと述べています。

reference: livescience

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