土星の衛星『タイタン』の油の湖には一体どんな生命が存在するのだろうか

1.タイタンには油の雨が降り、川が流れ、湖を形成している

まずはタイタンとはどういった星なのか説明しよう。タイタンは地球と同じく太陽系に属し、土星最大の衛星。さらに、表面温度は−179度の超低温で、太陽系の衛星で唯一となる濃い大気と、雲で包まれている。そのため、気圧が高く地球の1.5倍の気圧がかかっている。

そして、興味深い点が地球と同じく表面に液体の湖や川が流れていることである。とはいえ、この液体の湖や川は水によって、構成されているわけではない。地球よりやや高い気圧と超低温によって地球上ではガス状のメタンやエタンといった物質が、液体となって湖や川を作っているのである‼︎さらに、氷が溶けて地下にあるメタンやアンモニアが噴出する低温火山があり、火口のような地形もNASAの土星探査機カッシーニによって発見されている。

このようにタイタンでは水ではなく油が星を循環しているのである、かなりの異世界だとは思わないだろうか。

2.実は一度、人類はタイタンに探査機を送り込んでいる

2004年12月24日、今は亡きNASAの土星探査機カッシーニに搭載されていた欧州宇宙機関(ESA)の探査機”ホイエンス・プローブ”が母船より切り離された。タイタン上空約 1000kmの高度から大気圏に突入し,パラシュートを開いてゆっくりと降下し、約2時間半かけて地表に着地した。その間,大気の組成などの観測や地表の撮影を行った。タイタンの太陽からの距離は地球と太陽の距離の 10 倍近くもあり,タイタン地表に届く太陽光は地球が受けとる太陽光の数%程度にすぎない。しかも分厚い雲で覆われているため,タイタンの表面は昼間でもかなりうす暗くなる。そのため,ホイヘンスは地上 700mの高度まで降下した際,下向きのライトを点灯して撮影を続けたのだった。さて,厚い雲を通りぬけて地表に降りたホイヘンスはどんな世界を見たのだろうか。

そこはあまりに地球的だった。白っぽく明るい丘陵地に刻まれた樹枝状の谷の暗いすじ。この谷をつくった流体は,暗く平坦な地域に流れていったかのようにみえる。そこにのびる砂州のような地形もある。史上初めて見るタイタンの地表は,地球上で見なれた景観に驚くほどよく似ていた。

その後、ホイヘンス探査機はバッテリー切れで動けなくなってしまい、今もなおタイタンの冷たい大地の上で眠っている。

3.地球の常識を逸脱した『タイタンの生命』

地球の生物というのは我々人類も含め、水をベースに構成されている。人体の60%は水でできていると耳にしたことのある人も少なくないでしょう。そして、地球に生まれた最初の生命は水の中にいたと考えられているのだ。細胞の外を水で囲まれ、細胞の内側もまた水で満たされた生物。こういった生物の細胞膜は、外側の水と内側の水を仕切るために基本的に脂質でできている。しかし、タイタンにある液体は液体メタンといった、油のようなもの。周囲が油の世界ならば水と油は基本的に混ざり合わないため、仕切る必要はないと思いませんか。 (タイタンの気温は−179度のため、水は凍ってしまうと考えがちですが、地球にも氷点下の世界に生息する生物がいるように、なにか体温維持のサイクルがあるものとします。)

となると、地球の生物のように細胞膜のある生命ではなく、細胞膜のない生命が存在できるはずです。細胞膜は生命の定義、重要な特徴だとされていますから、これが要らないと言うのは既存の生物学からすると非常に逸脱している。しかし、仕切りとなる細胞膜が入らないのであれば、生命をより発生しやすいと言えるかもしれません。

タイタンのオンタリオ・ルーカスと呼ばれる湖は数万年前は広範囲に液体を蓄えていた痕跡がありますが現在はかなり狭くなっている。原始の地球でも水たまりのような場所に、アミノ酸や核酸塩基、DNAの元となる有機物が溜まり濃縮、蒸発してお互いがくっつくことが盛んに起き、それが生命誕生に繋がったという説がある。そう考えた時、タイタンの油の湖に地球とは異なる生命体が生息していても不思議ではない。地球外生命体を想像する際には、頭の中をなんでもありの状態にしておく必要があるのかもしれない。

4.タイタンにドローンを送り込む計画

NASAは2020年代中盤にタイタンにドローンを送りこむ『Dragonfly』という計画を検討している。ローバーなどの探査機がある中、ドローンが選ばれた理由は以下の4つである。

1.タイタンは重力が小さく、大気も安定しているためドローンが飛行しやすい
2.任意の探索地点を選択することができる
3.地上型の探査機は時速約1マイルなのに対し、ドローンは比較的高速で移動できる
4.衛星表面との物理的な接触がないため、タイヤや本体への損傷がない

Dragonfly計画ではドローンを地表に降ろし、数十か所で生命活動に関する化学反応の有無や、人類が居住可能かなどを調べる予定。ちなみにNASAは大気が極めて薄かったり、ほぼ真空のような環境でも飛行可能なガスを噴射して飛ぶ仕組みのドローンをすでに開発している。

並びに、『Titan Submarine Phase Ⅰ』という計画があり、NASAは2040年ごろにタイタンの油の湖に潜水艦を送り込みたいと考えている。しかし、これはまだまだ机上の計画であるため、現実的な話ではない。

いずれにせよ、遅かれ早かれ人類がタイタンを探査して、地球全体に絶大なインパクトを与えるような情報を発見することになる可能性は高いのではないだろうか。