バッタの群れを誘発する化学物質の存在がついに明らかに。

2020.08.15
auther vaience
バッタの群れを誘発する化学物質の存在がついに明らかに。

バッタ1匹はペーパークリップより少し大きい程度しかありません。しかし彼らはお互いを引きつけて群れとなります。何十億ものバッタが一斉に飛ぶと空飛ぶ絨毯となり太陽をさえぎり植物や作物に影響が及びます。

Credit:Pixabay

このような巨大な群れによって1月以降アフリカやアジアの作物を荒らし、食料供給を脅かしています。

しかし今まで科学者たちは虫が孤独な生活を捨てて群れをつくる原因がわかりませんでした。

水曜日にNatureに発表された研究によって群れを誘発する物質を特定しました。トノサマバッタは4-vinylanisole(4VA)というフェロモンに反応するというのです。

4VAは1種類のバッタにしか有効ではありませんが、この発見によって、今年大きな被害を引き起こしたバッタを含む破壊的な群れをコントロールするためのヒントを得ることができました。論文著者は、4VAを使ってバッタを1ヶ所に集めてまとめて殺虫剤で殺す事ができると提案しています。

ケミカルクラクション

トノサマバッタは世界で最も広く分布している種です。

すべての種のバッタ同様に昆虫は成長に伴って2つのうち1つの道を選びます。孤立するものと集団を作るものです。バッタは一生の中でいつでも孤立した生活から群衆を作る生活へと変わることができます。

科学者は長いことこの生活の変化はほかのバッタが出すフェロモンによるものだと考えてきました。しかし4VAを発見するまでは、そのケミカルクラクションが何なのかわからなかったのです。

「この研究で長いこと予想されつつも特定できなかったフェロモンを発見し、孤立したバッタが群居し、危険なバッタの群れとなる原因がわかりました。」と神経生物学者で新たな研究に伴って記事を書いたレズリー・ヴォスホール氏はBusiness Insiderの取材に答えました。

論文著者は4VAがトノサマバッタのオスもメスも老いも若きも同様に惹きつけることを発見しました。

さらに、群れの密度が高くなるにつれて空気中の4VAが『著しく増加する』という結果も出た、とヴォスホール氏は記事で述べています。つまり、いったん群れができると時間の経過とともに孤立したバッタがどんどん集まってくる理由の説明がつきます。

また、研究者たちは4~5匹のバッタが集まった途端に4VAを作り出し放出することがわかりました。

ヴァスホール氏によると、4VAは人間には甘い香りがするそうです。

自らの匂いでバッタを罠に

ヴォスホール氏はさらに、殺虫剤は『バッタの大襲来に唯一有効な武器』なのですが、群れの大きさや予測が不可能なため闇雲に散布することを政府や農民に強いている、とも話しています。

殺虫剤がほかの生物に害をもたらし、植物や人間にも被害が及ぶでしょう。

しかし4VAの発見によって群れと戦う外科的アプローチを促すことができます。論文著者はバッタをおびき寄せて殺すために人工の4VAを散布することを提案しています。

粘着性の罠に4VA入りのエサを仕掛けて小規模で実験したところ、数十匹捕獲することができました。

別な方法として、バッタが4VAを検出できないようにする方法もあるでしょう。

バッタは触覚を通してフェロモンを検出します。嗅受容体に分子が付着します。ですから研究者はバッタの遺伝子操作をして受容体を減らしたところ、変異体のバッタは野生のバッタに比べて4VAに対する反応が少なかったことがわかりました。

これらの発見に基づいて、著者は『抗VA』物質を開発することでバッタの嗅覚システムを妨害できると考えています。

「このような分子はバッタの群れを防ぐために広く使える方法で、事実上バッタは嗅覚を失います。」とヴォスホール氏は話しています。

今年は災難の年

ヴォスホール氏は記事内で、アフリカやアジアの豪雨によってサバクトビバッタの個体数が増えたことについて述べています。

「今年は災難の年です」と記しています。

サバクトビバッタは彼女が研究している種ではありませんが、それでも「トノサマバッタで培ったものをサバクトビバッタに生かせるかもしれません。」とヴォスホール氏は話しています。

「おそらくこのバッタにとって4VAは群れを作るフェロモンではありませんが、この論文にはそれに代わるものを探す青写真があります。」とも話しています。

reference:sciencealert

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