NASAが1970年代から手つかずのままにしていた「月のちり」を公開

40年以上経過して初めて、NASAの科学者がアポロ任務中に採集された月の物質のサンプルを公開した。ここ数十年にわたる分析技術の発展のおかげで、この貴重な人工遺物が地球に最も近い天体に新たなる洞察をもたらすかもしれない。

表土(岩や土壌の一番上の層)のサンプルは「サンプル73002」と呼ばれ、11月5日に公開された。それはアポロ17号に乗船した宇宙飛行士であるジーン・サーナンとジャック・シュミットが1972年12月に採集したものである。その際、月の表面に4センチメートル(1.6インチ)のチューブで穴を掘り、サンプルを採集したとのこと。

これほどまでの年月を月の表土のサンプルの大部分を分析するために待ったが、いよいよその利益が生まれる時が来るだろうとNASAは期待している。つまり、今日の科学者は1970年代には利用不可能だったたくさんの道具や技術を用いることができるということである。

Credit: NASA/James Blair

「我々は現在、アポロ計画実行中では不可能だった測定結果を出すことができる。」とNASAアポロ次世代サンプル分析(ANGSA)計画の惑星地質学者サラ・ノーブルは言う。

これらのサンプルの分析はアポロからの科学的利益を最大限にすると同時に、新しい世代の科学者や専門家が技術を洗練し、2020年代、もしくはそれ以降に予定されている月に関する任務に向けての準備を手助けしてくれるだろう。

NASAの科学者が現在利用できる技術には非破壊3Dイメージング、質量分析(イオン化原子やイオン化分子を用いたスキャン)、超高分解能ミクロトーム法(サンプルを非常に薄く切っていく)がある。言い換えると、彼らはずっと詳細にこれらの月のサンプルについて研究することができるということ。

科学者は「サンプル73002」が公開される前に、それを高分解能3Dスキャンにかけた。そのおかげで、彼らは貴重な表土を移動させ、それをNASAの様々な調査チームに分配するための最適な方法に取り組むことができた。

Credit:Dave Edey and Romy Hanna/UTCT, UT Austin/NASA

ご想像の通り、岩のかけらは非常に丁寧に扱われる。まず初めに、外気からの汚染を避けるために超高純度の乾燥窒素で満たされたケースから取り出された。

今になって更なるサンプルが公開された理由の一部は、NASAが2024年中に月に宇宙飛行士を送る準備を進めているからである。

その宇宙飛行士たちは月面をめぐる間、新しいサンプルを一通り採集してくるだろう。そして、科学者に「サンプル73002」や「サンプル73001」によって明らかになった発見からの更なる調査問題を進めていくこれ以上ない機会を与えてくれるだろう。

今回、公開されたサンプルは宇宙飛行士が月をさらに深く調査していく価値に集中する手助けにもなるだろう。NASAによると、その表土は月にある極氷の埋蔵地を宇宙飛行士たちに示してくれる可能性があるという。

また、月の地殻が年月を経るとともにどのように進化してきたのかという問題に光を投げかけ、月の表面でどのように地滑りが起こるかについて科学者が理解を深める手助けになる可能性もある。

さらに、何十年も前に採集されたこれらのサンプルを調査することで、科学者は2024年のアルテミス任務のために作られた宇宙船に合う岩採集ツールの改善方法に関するヒントを得ることもできる。

次回分のサンプルは私たちに更なる情報を教えてくれるはずだが、NASAにすでに保管されているものから学ぶべきことはまだたくさんあるのだ。

「私はアポロの話を聞いて育った。私はそれに影響されて宇宙でのキャリアを追求することにし、今では月に行く次の任務を実現させる研究に貢献する機会を手にしている。」と宇宙物質の専門家であるチャリス・クライシャーは言う。この人こそ「サンプル73002」を公開した人物であり、私たちが出会った中で最も素晴らしい職位の一つを持ち合わせている人物なのだ。

「月で採集されて以来公開されていなかったサンプルを公開できる人物になれるというのは、これほどまでに栄誉であり、重い責任を担うことだ。私たちは歴史に触れているんだ。」とも語った。

reference: sciencealert