スーパーコンピューターを使って爆発後300日間の極超新星のモデル化に成功

多くの天文学的疑問に対する答えは地質学的年代というベールに包まれています。

その1つに極超新星が初期宇宙に果たす役割についての疑問があります。極超新星の役割は、ビッグバンでは構築されなかったより重い元素を作ることでした。どのようなプロセスで起こるのでしょうか?またどのように初期の恒星は爆発を起こしたのでしょうか?

3人の研究者はその答えを求めてスーパーコンピューターでシミュレーションを行いました。

その結果は 『Gas Dynamics of the Nickel-56 Decay Heating in Pair-instability Supernovae』と題した論文の中で発表されました。論文の第一著者は台湾の中央研究院天文及天文物理学研究所のKe-Jung Chen氏です。この論文はThe Astrophysical Journalに掲載されています。

この研究はハイパーノバと呼ばれるある特定の極超新星に関するもので、基本的には極超新星ですが強力なものです。ハイパーノバは通常の極超新星の100倍ほど強力で、130~250太陽質量の星に発生します。

科学者たちはこれまで極超新星について研究をしてきました。どんな働きをして、どんな種類があるか、そしてどうして爆発後の宇宙に水素やヘリウムよりも重い元素が作られるのかはわかっています。

しかし、特に初期宇宙に関する私たちの理解には重大なギャップがあります。

3人の研究者たちがハイパーノバを調査しようと思ったのは、宇宙で起こる極超新星の誕生や初期の元素になにかヒントがあると考えたからです。初期宇宙では、星の質量は高い傾向があったためハイパーノバがもっと多かったと考えられます。

しかし、現在ではハイパーノバは非常に希な存在のため観測するのは至難の業なのです。そこでスーパーコンピューターを使いシミュレーションを行ったのです。

彼らのシミュレーションでは、星の爆発がはじまってから300日間の様子を観察するためハイパーノバの核部分のシミュレーションを詳細に調査しました。        

Credit:ASIAA/Ken Chen

上の図:爆発波が星の表面を突き破ろうとしている対不安定型超新星のスナップショット

ハイパーノバの形成方法は2つあります。ひとつは核崩壊で、もうひとつは対不安定です。

核崩壊(Ⅱ型)超新星は、大質量の星が寿命になって燃料が尽きます。核融合が減少するにつれ土と向きの圧力となるエネルギー放出がなくなり星自身の重力エネルギーが核へと押しやられます。

最終的に重力エネルギーによって核の崩壊が起こり、星は超新星として爆発します。その星の質量によって中性子星やブラックホールが残ることがあります。

対不安定型超新星は130から250太陽質量の非常に質量の高い星で発生します。電子と反物質が陽電子と対になることで星の中で生成されます。

そうすると星の核部分で不安定となり質量の高い星が自身の大きな重力との均衡をとっている内部放射圧が減少します。不安定な星は部分的に崩壊し、核爆発の暴走を起こすのです。その結果星は大爆発によって破壊され跡形もなく消えます。

シミュレーションをするために、研究チームは対不安定型超新星に焦点を当てました。これを選んだ理由のひとつは、対不安定型超新星は大量のニッケル-56を作り出すからです。

ニッケル-56はニッケルの放射性同位体で超新星の観測に重要な役割を果たしています。ニッケル-56の崩壊は超新星の残光の元となります。

研究チームは日本の国立天文台(NAOJ)の天文シミュレーションプロジェクト(CfCA)スーパーコンピューターを使いシミュレーションを行いました。

Cray XC50というこのスーパーコンピューターが2018年に作動し始めた頃は、天文学シミュレーションにおいては世界一早いスーパーコンピューターと言われていました。このコンピューターの総力を尽くして初期宇宙に光を当てることはできたのでしょうか?

論文第一著者のChen氏によると、このプロジェクトは非常に難しいものだったそうです。

翻訳されたプレスリリースで彼は「シミュレーションのスケールが大きくなるほど高解析度を維持するために計算全体が難しくなりより高い計算能力を要しますし、物理学も当然複雑化します。」

Chen氏は続けて、それに挑むための『精巧に作られたコードと強健なプログラム構造』があると話しています。3人の研究者は超新星の長期的なシミュレーションの経験があるので、このような研究にはうってつけなのです。

超新星のシミュレーションは今回が初めてではありません。他にもより理解しようと独自にシミュレーションをした研究者はいました。しかし爆発から30日間のシミュレーションだったのに対して、今回は300日間のシミュレーションができたのです。

Credit:ASIAA/Ken Chen

上の図:対不安定型超新星の3Dプロファイル。青いキューブが表しているのはシミュレーションした宇宙全体像。オレンジの部分はニッケル-56の崩壊

カギとなるのはニッケル-56でした。ニッケル-56は超新星の長く伸びる光を生み出すだけではありません。爆発に重要な役割を果たしているのです。研究チームは3つの別々の親星のシミュレーションを徹底的に行いました。

超新星は200太陽質量以上の非常に質量の高い親星が必要です。超新星は大量のニッケル-56を作り出します。

論文によると、彼らは0.1 ~30太陽質量を合成できるそうです。そして光を生み出すこと意外にもニッケル-56の役割があります。

論文の中で著者は、ニッケル-56は『元素を混合できるイジェクタに重要な動的作用を及ぼすことができます』と記しています。

研究チームは『超新星内部の気体の動きとエネルギーの関係性』を調査したいと思っていました。彼らはニッケル-56の現象初期段階に置いて温められたガスは拡張し薄い殻のような構造を形成することを発見しました。

Chen氏はシミュレーション結果を説明し、「ガスの殻内部の温度は非常に高く、計算したところ気体の流動に~30%のエネルギーが使われていることになります。残りの~70%のエネルギーは超新星の光に使われています。最初のモデルは気体力学効果を考慮に入れていなかったので、超新星の光は過剰に見積もられていました。」

論文にはさらに詳細が書かれています。「熱いニッケル-56の泡の膨張によって爆発から200日後にイジェクタのケイ素層のベースに殻を形成しますが、流体力学学的な不安定さは起こらず56Niと28Si/16Oが豊富なイジェクタへと発達します。しかしながら56Ni加熱の流動力学的効果は弱く、崩壊エネルギーを後に光ることに利用することでイジェクタ内部膨張へ転用することでPl SNeの観測に影響を与えるかもしれません。」

Credit:ASIAA/Ken Chen

上の図:3種類の超新星のシミュレーション。上から20、100、300日のシミュレーション結果。赤の線はNi-56の泡でできた殻。シミュレーションによってNi-56の泡の膨張はほかのものと混合しないことを示しています。U225親星で怒いた混合はリバースショックによる不安定さが原因。

超新星は現代では稀にしか見られませんが、今後もそうとは言い切れません。超新星の形成に大質量の星が必要で、その星は初期宇宙にはごく一般的でしたので、過去にはもっと多くの超新星が存在したことを示しています。

しかし、間もなくそのような超新星が放つ古代の光を見ることが可能な器械を私たちは手にするかもしれません。

著者は、「Pl SNe<対不安定型超新星>は究極の宇宙の灯台になるかもしれない、というのもジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡ナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡、次世代巨大望遠鏡で宇宙の夜明けz~25の地点に近赤外線(NIR)でこれを観測することができるのです。」

これらの未来の望遠鏡が初期の超新星を観測できるのであれば、今回のような研究に新たな道が開かれ、私たちが見たものを理解する道筋をつけることができます。

reference:sciencealert



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