スコットランドで犬の散歩する方たちは気をつけたほうがいいかもしれません。ウエスト・ダンバートンシャーには不可解なことに1950年代以降、犬が橋から飛び降りてしまうという奇妙な橋があるのです。600匹以上の犬たちが飛び降りており、およそ50匹の犬たちが命を落としています。
1895年に建てられたこの悪名高いオーバートーン橋はこのおぞましい歴史から自殺犬橋と名付けられていますが、なぜ犬たちがこの橋の欄干から自ら身を投げ出してしまうのか、という大きな謎を残したままなのです。
当然超自然的説も数多く語られていて、有名な話にいわゆるオーバートーンのホワイトレディーが犯人だという伝説があります。その亡霊は父がオーバートーン・ハウスを近くに建てたというジョン・ホワイトさんの未亡人であると言われています。地元の人は、悲しげな幽霊があたりを歩いているという主張しています。しかしなぜ犬が深い山峡へと飛び降りてしまうかという疑問の答えにはなっていません。
現在のオーバートーン・ハウスの所有者であるボブ・ヒルさんは、橋の下の山峡を走っている動物の匂いが犬にとってうっかり飛び降りてしまうほどそそられるものなのではないか、というもう少し現実的な説明をNew York Timesにしてくれています。「犬はミンクやマツテツのようなイタチ科の動物や他の哺乳類の匂いを察知し橋を飛び越えてしまうのかもしれません。」とヒルさんは話しています。「その結果落っこちてしまうのでしょう。」
ミンクはそのみごとな肛門腺ゆえに特に強い匂いを放ち、1950年代にこの地に生息するようになったと言われており、オーバートーン橋で最初に犬が飛び降りた事件と完全に一致します。この説は晴れた日に犬が飛び降りるという謎に説明がつきます。というのも湿った天気はミンクの匂いの拡散の妨げになるからなのです。
この説を検証するために動物行動主義心理学者のデビッド・サンズ氏はテレビのドキュメンタリー番組の一部としてミンク、リス、ネズミのうちどの動物の匂いについていくかの選択肢を犬に与えました。その結果70%の犬がミンクへとまっすぐ進んで行きました。ミンクのにおいが犬にとってとても魅力的だということを示唆しています。
しかし、どんなに魅惑的な香りだとしても、犬は匂いを放つ半水生哺乳動物を追いかけるために15m下に落ちるという危険を冒すほどバカではないことは確かです。ミンクがスコットランド中の川のそばに生息していることを考えると、なぜこの現象が他の橋でもおこらないのでしょうか?
サンズ氏によると、その理由はこの橋自体のデザインにあるのではないかというのです。その欄干は犬の背丈より高く、越えた先に落下が待っていることが見えないのです。ミンクの匂いに誘われて犬は欄干の先に地面があると予想して飛び越えますが、飛び越えたあとに死の落下が待ち受けていることに気づくのです。
これまでのところ、どの説も正しいと証明されたわけではありません。スコットランド動物虐待防止協会の行なったこの奇妙な現象に対する調査は成功していないのです。
ですから、原因がミンクであろうとそのほかの説であろうと、オーバートーン橋を渡るときにはあなたは犬のリードをしっかり握っておくにこしたことはないでしょう。
reference: iflscience