睡眠時の脳波が脳細胞に損傷を与える可能性がある有害な老廃物を洗い流すのに役立っていることが判明。この睡眠中の脳の清掃に障害を起こすことがアルツハイマー病のようなものの原因や症状である可能性も考えられている。
この研究に関する詳細は学術雑誌「Science」に11月1日付けで掲載されている。
睡眠時の脳の電気活動の徐波は、脳細胞に損傷を与える可能性がある有害な老廃物を洗い流すのに役立つようです。このプロセスは、アルツハイマー病などの神経変性状態の予防に役立つ可能性があります。
「睡眠は、脳から有害な代謝老廃物を除去するために非常に重要です。」とマサチューセッツ州のボストン大学のローラ・ルイス氏は語ります。彼女によると、睡眠不足によってアルツハイマー病に関係するベータアミロイドなどのタンパク質の塊が脳内に蓄積してくるそうです。
脳波は規則正しく一斉に発火する脳細胞の大きなネットワークにより作られます。その機能の多くは不明ですが、睡眠が深いとゆっくりと、起きていると速くなることがわかっています。
脳波が脳の清掃にどのような役割を果たすかを確認するために、ルイス氏と彼女のチームは、脳波キャップを用いてMRIスキャナー内で昼寝中の13人の脳の電気活動を測定しました。
それと同時に研究者たちは、脳内の血中酸素濃度と脳と脊髄を取り囲む無色透明な液体である脳脊髄液の流れも測定しました。
彼らは、睡眠中に脳脊髄液の大きな波が20秒ごとに脳に流入出することを発見しました。このプロセスによって老廃物が取り除かれると考えられています。脳に入る流れが起こる前に、δ波と呼ばれる電気活動の徐波のパターンが発見されました。
これらの脳波は、睡眠中に記憶を強化する役割を果たすことも知られています。研究者たちは、脳波が脳から出ていく血液の流れと一致していることを発見しました。これは、脳を取り巻く液体の総量のバランスをとるのに役立ちます。
ルイス氏によれば、アルツハイマー病のような神経変性状態の人は、除波が少なく弱いそうです。「したがってこれらの障害があれば脳脊髄液の波がより少なくより小さくなり、それが老廃物の除去具合に影響を与えると予想されます。」
しかし、睡眠中の脳の清掃に障害を起こすことがアルツハイマー病のようなものの原因や症状であるかどうかはまだ明らかではありません。
一夜の悪い睡眠が脳内にベータアミロイドを蓄積させる原因になります。でも慌てる必要はないとルイス氏は言います。
人は時々十分な睡眠を取れなかった場合でも、翌晩にはより多くの電気活動の除波を示すためです。それは、脳が失われた睡眠の一部を補う方法なのかもしれません。
reference: new scientist