一般的に、男性科学者と女性科学者の間には、自身の研究を発表する方法の違いが見られると言われています。そしてその違いは、出世争いにおいて、男性科学者に有利に働いていると推測されます。
マンハイム大学のマーク・ラーケンミューラー博士は、研究に肯定的な印象を与える25の単語について研究を行いました。この研究には、10万件以上の査読済みの臨床医学研究論文と、600万件程度の評価の高い科学論文が利用されました。
その結果、第一著者または最終著者の、少なくとも1人が男性だった場合、「有望」や「刺激的」といったポジティブな言葉が論文に含まれる割合は、そうでない論文と比べて12%高いことがわかりました。
第一著者は通常、論文において最も貢献した割合の高い人物です。また最終著者は責任著者となるのが通例であり、多くの場合研究テーマを決定する役割を担っています。
このポジティブな言葉の含まれる割合の男女差は、トップジャーナルで発表された論文群においても存在していました。トップジャーナルの場合、その差は約6%と比較的小さいものではあります。しかし裏を返せば、どのジャーナルにおいても、男性研究者が深く関わる論文においては、ポジティブな言葉が含まれやすい傾向にあるということを示唆しています。
ラーケンミューラー博士がBritish Medical Journalで報告しているように、論文におけるポジティブな言葉は、一定の効果をもたらすようです。それらの語を含む論文は、後続の論文で引用される割合が約9%高く、トップジャーナルに掲載されている割合が約13%高いと発表されています。
論文の引用に応じて科学のキャリアが向上することが多いため、ポジティブな言葉を含むかどうかという違いは、その論文の著者が昇進するかどうか、あるいは科学の分野で活躍し続けられるかどうかを決定づけるかもしれません。
男性の論文が実際に女性の論文よりも重要だったという証拠はありません。ラーケンミューラー博士と共著者の発表した論文は、「学術医学と生命科学分野において、男性は女性よりも自分の研究をより好意的に発表する傾向があること。またこれらの違いが、後続の論文に引用される可能性について影響していること」を示唆しているのです。
この調査結果は、女性が男性よりも自分の能力を過小評価する傾向にあり、また、男性たちの誇大宣伝的な論文により、昇進などの社会的影響を被る傾向があることを示す過去の研究と一致しています。この男女間の差は、編集者が助長している可能性もあります。
男性が女性よりも成果を誇張する傾向があり、それが原因となって高い評価を得られているのならば、男女のどちらが姿勢を改めるべきかは明らかです。
学術機関にとっては、男性に対して論文に対する姿勢を改めるよう説得するよりも、女性に対して「男性と同じような、誇大宣伝的手法で論文を書く」というトレーニングコースを実施する方が簡単かもしれません。しかし、それは科学全体にとって、正しい選択とは言えないでしょう。一般的に、誇大宣伝の結果は、長期的に国民の信頼を損なう問題と見なされているからです。
この論文の不随論説において、ハーバード大学のジュリー・シルバー博士は、「科学におけるジェンダーバイアスを減少させるためには、論文の誇大宣伝的な手法に対処する必要がある」と主張しています。しかし同時に、「女性側を男性側に合わせる」というアプローチに対して、警鐘を鳴らしています。
reference:iflscience