良い行いは気分を高め不安をやわらげるなど健康へのメリットが数多くあるということが証明されました。新たな研究では福祉活動をすることで痛みも和らげることができると発表されたのです。
「一方、今までの理論や研究のほとんどは長期的、間接的な利益を強調してきましたが、今回の研究で痛みのある参加者たちが福祉活動するとすぐにその恩恵を受けたことを示したのです。」著者は論文の中でこのように書いています。
米国科学アカデミー論文集に掲載された一連の研究は、痛みなどの不快感に福祉活動がどう影響し、どれだけ早く反応が起きるのかを調べたものでした。
研究チームは痛みのある参加者を、ボランティア活動をしたグループとしていないグループの2つに分け、活動後にどのように痛みを感じるかを分析しました。
1つ目の実験では、地震が起こったというニュースの後に献血をしたグループは、ただの血液検査をしたグループに比べてより大きな針を刺したにも関わらず痛みを感じにくかったのです。
2つ目の実験では移民労働者らの子供たちのために自由に時間やサービスを提供してボランティアをしたグループは、そうでないグループに比べて寒さに晒されても痛みを感じにくかったのです。
3つ目の実験では、がん治療センターで慢性的な痛みを抱えたがん患者に、ほかの患者たちのために料理や掃除することをお願いしたグループと自分自身のためにそれをしてもらうグループを観察しました。その結果ほかの患者のために掃除などをしたグループの患者の痛みのレベルが下がったことを確認したのです。
4つ目の実験は、参加者に孤児のために募金することを検討してもらい、献金してもらえる場合に、募金がどれだけ役に立つかを評価してもらいました。そして参加者の手に強い電気ショックを与えながら脳をMRIスキャンして観察しました。
MRIスキャンの結果、脳の痛みを制御する部分の反応が募金したグループの方がしなかったグループよりもよりショックへの反応が弱かったことがわかりました。
さらに研究者が発見したことは、患者の脳がどれほど痛みを感じるかの予測はその善行によって違うというのです。役に立つ行動をすればするほど痛みは薄れていきます。
つまり利他主義と目的意識は関係性があると言えるかもしれません。
2017年の研究では、利他主義が慢性的な痛みに苦しむ人の痛みを和らげ目的意識を持つことに役立つということがわかりました。ボランティアをしていない時、あるいはほとんどしていないとき体調が悪化し慢性的な痛みへとつながり、ボランティアに勤しんでいる時には痛みやうつ状態が和らぐことがわかったのです。
研究チームが遠くに興味をもったのは、ボランティア活動が慢性の痛みを抱えた人たちが陥ることがあるうつや目的を失うことの緩和の助けとなるのかということです(例えば親としての役割を終えたり、定年退職してうつになったり目的を失うなど)。
「慢性的な痛みによって喪失感を感じている人にとってボランティアなどの活動は健康や幸福感を向上させるために重要な役割を果たします。ある研究では慢性的な痛みを抱えた患者がボランティアに参加したことで痛みも和らぎ目的意識を持つことができたという報告があります。」と論文にあります。
研究チームは痛みと鬱の関係性の推定9%はボランティア活動によって説明がつくと断定しました。
最近の研究結果はロール理論として一部説明が付く可能性があります。ですが、人が利他的行為をしてドーパミンが出ることで感じる『温情』すなわち『ヘルパーズハイ』の要因であるとも言えます。
利他的行為が治療に組み込むためにはさらに多くの研究が必要です。もし健康促進の万能薬をお探しでしたら、困っている人に手を差し伸べて見てください。
reference:fox10