エメンタールなどのスイスチーズに穴ができる際にはどうも干し草の微小なかけらが関係しているようです。この穴は長い間バクテリアが作るものとされてきました。
チーズの穴に関する昔からの説に「穴」をあけたのは、アグロスコープ(スイス連邦農業研究拠点)とスイス連邦物性科学研究所(EMPA)、ルツェルン大学からなる研究グループです。エメンタールチーズやアペンツェラーチーズの穴は、長い間バクテリアが生成する二酸化炭素によってできるものと信じられてきました。
しかし研究グループは干し草のかけらが「非常に効果的な穴の核として働くことによってチーズの穴の形成を促す」との仮説を立てました。
これを実証するため、精密濾過された牛乳を使って8個のエメンタールチーズが作られることになりました。そしてそのうちの1つを除き、干し草の粉末が0.0625mgから4mg加えられました。
グループは研究報告「チーズの穴の形成メカニズムとその制御」の中で、干し草の粉末量と穴の形成との相関が「高いレベルで有意」だと述べています。
そして「この研究結果は明らかに精密濾過された牛乳中の微量の干し草粉末がチーズ熟成中に穴の形成を促すことを示している」と結論付けました。
「微量の干し草の粉が生乳に入って自然な形で穴の核となり、チーズに穴が形成される引き金になっていたと考えられる。従って干し草の粉末をわずかに加えることにより、人為的に穴を『くり抜』かなくても、自然現象をコントロールして使えるようになる。」
「この結果からは衛生的な乳製品製造と、穴を作るため固形の破片を牛乳に加える必要性という相反する要請が浮かび上がる」と報告は述べています。
研究の結果は「国際乳業ジャーナル」に掲載され、過去何十年にもわたって「重要な技術革新」で発達した衛生的な製法と、固形破片の混入という「相反する要請」がまさに浮かび上がることとなりました。
「厩舎でミルクバケツを使う伝統的な製法は、隔離されたエリアの自動化システムに置き換えられてきた。目の細かいフィルターが乳業で使われ始めたことと合わせ、これが生乳への固形物混入を劇的に減少させる原因となった」と報告書は述べています。
「伝統的なエメンタールチーズ製造者にとって穴の消える問題が深刻化するのは不思議ではない」と言うのです。
一方、「この研究結果は過剰な開放性という難問を克服する助けとなる可能性がある。さらに、衛生的な乳製品製造のため微生物汚染の低減を求めると、それによって(穴の核のような)固形破片が牛乳へ混入しなくなるとのジレンマに対処することができる。」とも言います。
エメンタールに関する乳業、製造業、流通業の利益代表である「スイス・エメンタール」からは、この研究へのコメントは得られませんでした。
reference:daily