炭酸飲料にミント味のメントスを投入する実験が、もう何年も科学博覧会の定番となっています。なぜ、泡の間欠泉が吹き上がるのかということは、ほどんどの10歳の子どもに説明してもらえる一方で、顕微鏡レベルで反応の特徴を理解するのはそれほど容易ではありませんでした。
米国のスプリング・アーバー大学の化学の教授がコロラド州の高校教師と手を組んで、決定的瞬間の反応を調査したところ、炭酸飲料の噴水を発生させる気泡の大きさに関する複雑な詳細が初めて明らかになりました。
この調査をするためにふたりは通常の実験会場である体育館や教師用駐車場より若干遠くまで出向きました。実験の場を求めて、カリフォルニア州のデスバレーからロッキー山脈のパイクスピークの頂上に至るまで、ほぼ文字通り、地の果てまで行ったのでした。
初期のSNSでの人気は言うまでもなく、単純で危険はなく、費用も大して掛からないこのメントスとコーラの実験は、毎年、学校の授業で化学と物理の様々な法則を演示するために行われています。
基礎的なレベルでは、この化学反応は極めて単純明快に説明できます。コーラの中には二酸化炭素が圧力を受けて溶けています。昔からよく知られている気体の法則によれば、ペットボトルの蓋が割れると圧力が変わり、溶液から気体がいくらか抜けて空気の中に溶け込みます。
ペットボトルを振るなどして、溶液が周囲の空気に触れる量を増やすと空気中に逃げ出す気体が増えます。メントスは、このプロセスを激烈に加速させるのです。
メントスの表面の無数の小さな穴が微小な気泡を作る絶好の場所になることが先行調査によって判明しています。1粒の白いメントスがコーラの中に沈んでいくとき、表面から溶け出した成分がペットボトルの奥深くで液体に溶け込んでいた二酸化炭素を拡がらせ、その二酸化炭素がメントスの表面の何千もの穴に急速に入り込み、穴を埋めます。
核生成で生じる、このような小さな気泡の正確な大きさは、これまでメントスの多孔質の表面の顕微鏡写真に基づいて推定することしかできませんでした。
これは些末な疑問ではありません。二酸化炭素が液体から離れるためには大量の気体が流れるのに適した大きさの表面積がひとつひとつの気泡になくてはなりません。
理論上、気泡は直径が1ミクロン以上はある必要がありますが、大きな気泡は、その分、大きな空間を占めるため、核生成のための場所の数が減り、全体の流動率に影響してしまいます。
噴出する瞬間を視覚的にとらえる簡単な方法はないので、この問題を解決するには物理法則の重要な関連性を巧妙に利用することが求められます。つまり、圧力や容積などのバリアブル(変えられる要素)の数を増やすということです。
スプリング・アーバー大学の化学者(自称メントスコーラのファン)であるトマス・カンツルマン氏は、この反応が標高の高い場所ではるかに劇的になることに注目しました。
2018年にカンツルマン氏はかねてから熱望していたものを父の日のプレゼントとして贈られました。お気に入りの実験を現実世界で試みるために国内を端から端まで旅する許可を家族から得たのです。
「この目的のために海抜より低いデスバレーから標高4,300メートルのパイクスピーク山頂まで、異なる高度の場所を何ヶ所も求めて国内を遠距離移動して実験を行いました」とカンツルマン氏は科学系ブログ『インプロバブル・リサーチ(信じられない調査)』の取材に答えています。
「最高に楽しい実験旅行になりました」
カンツルマン氏は友人である理科教師のライアン・ジョンスン氏にコロラド州の山の斜面で実験を行ってくれるよう話を持ち掛け、承諾を得ました。(ふたりが実験を楽しんだ様子をこのカンツルマン氏のユーチューブ動画で見ることができます。)
ふたりは、気圧のみが実験結果の主要因になり得るのではないことを発見しました。起泡作用の一因となる、より細かなバリアブルを考慮する余地があったのです。
異なるキャンディーを比較するとともに、気圧の変化から得られるデータと脱ガスで失われる質量の測定結果を組み合わせることで、メントスがこの種の活性化実験に最もよく選ばれる理由について、すぐに大方の見当がついたとふたりは言っています。
ふたりの計算によると、核生成場所であるメントスの表面の穴は直径が2~7ミクロンであり、これは、気泡の大きさと穴の密度の間で折り合う大きさとしては、かなり適切なものなのです。
両氏の結論は、この有名な演示実験を説明する既存のモデルに基づいて導かれており、メントスの多孔質な表面の顕微鏡写真に比較的合致するものでもあります。
メントスの今後の宣伝文句を考え出さなくてはならないマーケティング担当者たちにとっては、この実験結果はすばらしい知らせとなったに違いありません。けれども、真の意味で利益を得るのは、未来の化学者や物理学者を養成するために使用するデータを探している教師たちでしょう。
次世代のメントスコーラの科学博覧会ポスターを見るのが楽しみです!
当該論文はJournal of Chemical Educationに掲載されています。
reference:sciencealert