もしあなたが外出自粛、あるいはパンデミックの進行でストレスを感じているなら、最近夢が少し変わったことに気づいているかもしれません。夢は無数の要因に影響されますし、パンデミック下ではストレスや日常習慣の喪失、アルコールなどさまざまなきっかけがあるので、睡眠の質が変わったと多くの人が感じたとしても不思議はないでしょう。
ミネソタ州セントトマス大学で神経科学と心理学に携わり、カレッジ睡眠センター長を務めるロクサン・J・プリチャード教授はこのように述べています。「ストレスがあると良質の睡眠を十分取れなくなり、良質の睡眠が取れなければますますストレスが強くなります。一種の進化的適応であり、これがあるため戦地や夜行性の猛獣がいる所で10時間眠りこけたりせずにいられるのです。」ただ眠りの中断は戦地で役立つかもしれませんが、世界を席巻する見えない病原体に対しては無力です。
なぜストレスが夢の数や鮮明さに関係するのかを理解するため、まず睡眠サイクルについて再確認しましょう。通常私たちの睡眠はレム睡眠を含む4つの段階を繰り返していて、1巡にはふつう90から110分かかります。最初数サイクルのレム睡眠は短いものですが、時間は回を追うごとに長くなります。眠ってすぐ夢を見るように思うのはこのためです。
ストレスがあると脳は悲観的な思念が沸き出るような状態となり、眠りに入ること自体難しくなります。しかしプリチャード教授によるとこれだけではなく、悪夢の頻度や夜中に目覚める回数が増えるとのことです。
夢を見た後に起きる回数が増えると夢の内容を覚えていることが多くなり、次の日の精神状態に与える影響も大きいため、先の2条件の組み合わせは好ましくない結果を生むことになります。「レム睡眠とノンレム睡眠ではなくレム睡眠と覚醒状態を繰り返すようになると夢の内容を覚えている回数が増え、あまり眠れないと感じるようになります。夢の内容は否定的な感情に彩られていることが多く、次の日に尾を引いて気分にも影響します。また睡眠の質が低いので、悲観的な精神状態に陥る可能性も増えます。」
夢がより鮮明に一番の心配事を反映するようになると当然対処も難しくなり、アルコールで緊張を解く人も出てきます。しかし寝酒が効くとの説とは裏腹に、アルコールは睡眠をむしろ妨害する働きをします。「我々はなぜ眠るのか」の著者マシュー・ウォーカー氏は先の動画の中で、アルコ-ルで眠りやすくなるはずなのになぜ睡眠の質が悪化するのか説明しています。でもこのような試練の時に、酒を全く飲まないことが解決になるでしょうか?「酒は飲みます。」プリチャード教授は言います。「でもハッピーアワーだけで寝酒はやりません。」(良かった。)
肉体的にも精神的にも健康でいるために睡眠は極めて重要です。脳が睡眠中に自分自身を修復し、新しい神経細胞を作って神経回路を再構築、認識機能全般を改善する時間が確保できるからです。これができないと不安や憂鬱といったメンタルヘルス要件が悪化することもあります。
多くの記事に「この苦難の時」などといった言葉が溢れる現在、睡眠をできるだけ優先させることは私たちが前向きでいるための最善策だと言えます。また恩恵を受けるのは脳だけではありません。「慢性的に睡眠が阻害されると私たちの体は活動を続けるため省略できるものを探そうとします。長い目で見れば生存に欠かせない免疫系は残念ながらその対象とされてしまいます。いつも睡眠時間が短い人は風邪や呼吸器系疾患のウイルスに感染する割合が3倍以上にもなるのです。」
睡眠は食事や運動と同じく私たちの日常生活にかかせない重要なものであるにもかかわらず、多くの人は他を優先して切り捨ててしまいます。深夜にネットフリックスを見て起きている時には、「この回は明日でもいいかな?」と考えてみてはどうでしょう。
reference:iflscience