腰痛検査を受けた男性に生まれつき3つ腎臓があることが判明しました。ニューイングランド医学ジャーナル(NEJM)に今週掲載された報告によると男性は38才、腰の痛みでブラジル・サンパウロの病院を訪れた患者です。CTスキャンの結果ギックリ腰と診断されましたが、それだけではなく通常2つある腎臓が3つ存在することが分かったのです。
左の腎臓は普通通りですが、あと2つの腎臓は癒着しています。腎臓から膀胱に尿を輸送する細い管、「尿管」は左骨盤腎(位置が骨盤内にある腎臓)からの管ともう一つ左側の腎臓からの管が膀胱上方で連結し、右骨盤腎からの尿管は膀胱の右側につながっていました。サンパウロ・ドリン病院で症例報告を担当したレナート・フォレスト医師はこう語っています。「このような症例は初めてです。驚くと同時に、患者の健康に関する懸念もありました。」
奇妙なことに、この状態でも患者の健康には問題がないようでした。血液検査の結果腎機能は正常で、ギックリ腰を別にすれば健康状態は全般的に良好だったのです。合併症もなく、患者は経口鎮痛薬を投与された後に帰宅を許されました。フォレスト医師は言います。「患者の腎機能は完全に正常でした。腰痛の原因は既に診断済みで腹部超音波検査とCTスキャンの結果にも問題はなく、他の検査でも異状は見つかりませんでした。」
医師団の話によると患者の腎臓は珍しく健康を損なわない形の先天性異常で、おそらく胎児の成長過程で原始的な腎臓器官が2つに分裂したのだと考えられます。非常に稀なケースではありますが、こうした症例は過去に何度か報告されています。過剰腎臓と呼ばれ、過去100年にわたる医学文献を合わせても全部で100例に満たないと思われます。
1915年の文献では「過剰腎臓の完全な症例は腎臓病の中でも極めて珍しい」とされています。もっとも今回の症例研究でも述べられている通り、過剰腎臓を持つ人は自身の状態に全く気づかないことが多いのです。医師団によれば「こうした人は通常何の症状もなく、今回の症例と同様ほかの理由で検査を受けて初めて判明する可能性があります。」
内臓の位置が変わっても健康を損なわない例として、他にも内臓逆位症(situs inversus)という症状が知られています。これは体内の器官が通常とは反転した場所、例えば心臓が右胸部に、肝臓が左腹腔内にあるような状態のことです。過剰腎臓と同様、内臓逆位症の人も何らかの理由で検査を受けない限り自身の状態に気づかない場合が多いのです。
reference:iflscience