お茶やコーヒーから、ミルクコーラにまで含まれ世界中で広く摂取されているカフェインは興奮剤です。その他の興奮剤同様に多量に摂取すれば体に害があり、死に至ることさえあります。世界で最も人気のある向精神薬と言われるカフェインを大量に摂取した26歳の女性が集中治療を要したという事件を受けて、 BMJ Case Reportは大量摂取がいかに危険かを強調しました。
この症例報告にある匿名の女性は、ネットで購入したカフェインパウダーをスプーンに山盛り2杯摂取し自らロンドンにあるクイーン・エリザベス病院に向かいました。カフェインパウダーの商品の中にはアメリカ国内では違法なためアメリカ食品医薬品局(FDA)によって販売が禁止されているものもありますが、イギリスでは禁止されていないのです。
1~2gの軽度の過剰摂取で頻脈(心拍数100以上)や、見当識障害、骨格筋組織の損傷、幻覚、躁病などを含む重大な中毒になる可能性があります。更なる過剰摂取で(通常サプリメントによるカフェインの過剰摂取)では死に至る危険性もあります。5g以上のカフェイン摂取で死に至るケースが起きています。
FDAによると、今回の女性はパウダー状で20gも摂取し、これはコーヒーを56杯分に相当します。
ご想像通り、彼女が病院に到着した時には酷い苦痛、動悸、発汗、不安感、息苦しさを訴えていました。心拍数は1分間に108にまで上昇し、血圧は下がっていきました。呼吸は早く興奮状態にありました。心電図の検査ではカテコラミン誘発性多形性心頻拍に陥っていることがわかり、他の検査では代謝性アシドーシスという体で酸が作られる電解質異常を示しました。
彼女はまず代謝性アシドーシスの治療のため電解質置換を受けましたが状態は良くならず集中治療室へと移送されました。ここでフェンタニルによって鎮静化させ、ロクロニウムによる麻酔のあと人工呼吸器を装着しました。さらに胃腸内の毒素を吸着し血流にカフェインが吸収されるのを防ぐため活性炭を投与しました。
ありがたいことに、注意深いモニタリングとマグネシウムによる心拍数の回復治療によって、この女性は1週間後集中治療室から出て精神科チームのもとで回復することができました。幸運なことに大量摂取したにもかかわらず一命をとりとめた、と医師は話しています。検査によって彼女のカフェイン摂取量は死亡例が確認されている80mg/Lをはるかに超える147.1mg/Lであったことが判明しました。医師は彼女がカフェインを摂取してから数時間後に測定したと記録をしていますので、実際の摂取量はもっと多かった可能性があります。
この患者は、簡単にアメリカやオーストラリアでは死亡例があるため禁止されているカフェインパウダーを入手することが出来ることに懸念を示しています。
「Daily Mail Australia の記事でカフェインパウダーをスプーン2杯摂取して亡くなった10代の子がいることを知りました。」とこの患者は医療チームに話していたと症例報告書に記載されています。「オンラインでカフェインパウダーを1kg4,000円ほどで購入したら翌日届きました。私や家族はこれほど危険な量を簡単に安く買えることにショックを受けています。」
reference:iflscience