科学技術の進歩と有名なプロデューサ、ブライアン・イーノがかけたちょっとした魔法によって史上初めての星が奏でる音楽を聴くことができるようになりました。
宇宙は静かなわけではありません。星たちは宇宙のオーケストラを結成し止むことなくコンサートを開いています。全ての星は低周波音波を出していますが周波が低すぎるので人間には聞こえないのです。しかし幸運にも望遠鏡で捉えることはできるのです。私たちは音というとノイズを出すものと思いがちですが、理論物理学的に言うと音とは物質を通過する単なる振動のことをさします。
というのも、星は楽器のように中心まで硬いわけではなく、音波は外層部に閉じ込められてその中で跳ね返ります。それによって振動が起こることで星が暗くなったり明るくなったりするのを望遠鏡で確認できます。この振動を音に変換させるのです。
この宇宙管弦楽団では最も大きな星はベースやオーボエを担当し低く深い音を奏でます。小さな星たちはもっとピッチの高いフルートやバイオリンを担当します。
それを私たちの耳に聞こえるように周波数を上げ、天体物理学者ガリク・イスラエリアン博士が計算したこれらの星の低周波音波を、ブライアン・イーノがアレンジしました。今年のスターマスフェスティバルの『スターサウンド』プロジェクトとして作られた音楽をこちらで聴くことができます。
イスラエリアン博士や天文物理学者、そして伝説のQueenのギタリストブライアン・メイ博士らが立ち上げたスターマスフェスティバルは、恒星科学や宇宙開発、音楽、芸術の祭典で両分野からの後援者に故スティーヴン・ホーキングやピーター・ガブリエルなどがいます。
このフェスティバルの最新プロジェクトであるスターサウンドには大物たちが関わっています。スターマスが出版した50 Years of Man in Spaceという本で取り上げられたイスラエリアン博士の講演『Our Acoustic Universe』に基づき、彼の膨大な『星の音』コレクションを人間の耳に聞こえるように低周波音波の周波数を上げ、ブライアン・イーノが曲をアレンジしました。
オスカー賞を受賞したVFX制作会社DNEGのポール・フランクリンとオリバー・ジェームスが星の波形や太陽のイメージをもとにして映像を製作しました。その結果このように聞いて『見て』楽しめる素晴らしい星の交響曲の動画が完成したのです。
もちろん、このような振動を観察するのは音楽を作るためだけではありません。ちょうど地質学者が地震や地震波から地球の内部を測定するように、天文学者は星の音波を研究することでその星の大きさや年齢、内部構造を知ることができるのです。
この研究によってこれらの星を周回する惑星についても次々と明らかになります。NASAの惑星探査機のケプラーやTESSはどちらも星の振動を敏感に検知しますので、この技術を使うことで宇宙の星について知れば知るほどより多くの周回する惑星についても知ることができるのです。
reference:iflscience