2019年、科学者たちは太陽よりも250万倍明るい巨大な星が跡形もなく消えてしまったという事件に遭遇しました。
7月30日発行の Monthly Notices of the Royal Astronomical Societyに掲載の新たな論文は、宇宙探査チーム(天体物理学者)はいくつか考えられる説明を提示して消えた星の事件を解決しようと試みています。その中でも予想外の結末が際立っています。おそらくその巨大な星は死に、超新星爆発を起こすことなくブラックホールが誕生したのだろう、と研究者らは論文に記しています。これは今まで『前例のない』恒星の自殺行為です。
「私たちは宇宙で最も大きい部類の星が静かに夜に消えていくのを検出したのかもしれません。」とトリニティ・カレッジ・ダブリンの天文学者で、この星についての論文の共著者でもあるホセ・グロー氏は声明で述べています。
「もし本当なら、このような一生の終わりを迎えた星の怪物をとらえたのは今回が初めてのことでしょう。」と論文第一著者で、同じくトリニティ・カレッジのアンドリュー・アラン氏は語っています。
問題のその星は水瓶座の中にあり、7500万光年離れたところに位置しており、2001年から2011年にかけて研究が盛んに行われていました。その膨張した球体は高光度青色変色光星、つまり死に近づきつつあり、予測不可能に光が変化する傾向がある大質量星です。このような星は珍しく、現在ほんのひと握りしか確認されていません。2019年にアラン氏らは、銀河から完全に消えてしまったと思われるその星を発見するためだけにヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡VLTを使い、高光度青色変色光星の謎に包まれた進化に迫りたいと望んでいます。
通常太陽よりもずっと大きい星は死が近づくと巨大な超新星爆発を起こします。イオン化されたガスや強力なガスがあらゆる方向に放たれ何光年も離れたところにまで宇宙を染めるため、爆発は容易に観測ができます。(時にそれは非常に美しい光景を見せてくれます。)爆風に続いて恒星の核が崩壊してブラックホールが誕生、もしくは中性因子となります。これら2つは宇宙で最も巨大で謎に包まれたものです。
消えた高光度青色変色光星はそのような放射がありませんでした。ただただ消えたのです。
この謎を解くために、研究者らは2002年と2009年のこの星の観測記録を振り返ってみました。すると、この星はこの強力な爆発を起こした期間があり、通常よりもかなり早い速度で大量の恒星の物質を撒き散ら煎していたことがわかりました。高光度青色変色光星は老齢期にこのような爆発をする傾向があり、その際には通常よりもかなり明るく光る、と研究者たちは記しています。この爆発が終わったのは2011年以降のことであると研究チームは話しています。
これで以前の観測で明るく光を放ったことに説明がつきます。しかし、爆発の後に消えてしまうまでに何が起きたかのかについてはまだ説明がついていません。星が爆発後かなり暗くなったのは宇宙塵の厚いベールによってその姿が隠れてしまったという説もあります。もしそれが事実なら、星の姿が再び観測される日が来るでしょう。
さらに奇妙でおもしろい説として、星は爆発して二度と姿を現すことはなく、超新星になることなくブラックホールとなった、と唱える人もいます。星が消えてしまう前の推定質量から考えて、太陽の85~120倍の質量のブラックホールができたことになりますが、なぜ超新星になることなくブラックホールができたのかはいまだ謎のままです。
reference:livescience